DUAL Icalusu T

 飛べないイカロスの翼 

 うだるような残暑に溢れ出す汗を拭きながら少年は何処に行こうか考える。このまま帰るには早い時間だが、かと言って今日に限って何処かに遊びに行くような連れもいない。
やっぱりあそこしかねぇか‥‥。
クーラーもないのにそこはかとなく涼しく、三時を過ぎても着けばリアルタイムにおやつも出てくる便利な場所‥‥。
「う〜んしかしオリジナリティに欠けるというかマンネリ化してるというか‥‥」
ぶつくさ言いながら歩いていると突然目の前で人がうずくまっていた。紺色が主の浴衣らしき和服。どうやら帯の感じからして女性のようだ。
「大丈夫?彼女。具合でも悪‥‥」
「悪かったな、彼女じゃなくて」
「はっ‥‥?」
肩にかけた手を払うように彼女、もとい彼は顔を上げた。色白で体つきも華奢。顔も女だと言われれば大いに頷けるが荒っぽい口調を放つ声ははっきりと男性の物と分かる。
「悪いけど肩貸して。日射病になる‥‥」
「いいけど、別に‥‥。じゃあ今は日射病じゃねぇの?」
「単なる心臓発作」
あっさりと言って彼は少年の肩に身を預ける。ああ、心臓発作‥‥とそののりで流しそうになってはっ!?と少年は彼の方を見やる。ぐったりと垂れた首からしゃらっと軽い音を立てて銀色のピルケースが姿を現した。
おいおい‥‥もしかしてとんでもない重病人を拾っちまったのか‥‥?。
「とりあえずお前家何処だよ‥‥。っておい!寝んな!」
もしかしたら気絶したのかもしれないが‥‥。とりあえず目を伏せ、寝息らしき安らかな息遣いだったので少年は勝手に寝ているものと判断を下した。重くはないがこのまま自分の家に連れて行くにはちょっと遠すぎる。やはりあそこか‥‥と主人あるじのため息を想像して自分もため息をつきながら彼はそこに向かった。


 「もう、闇野さん大変だよぉ」
とぼやきながら少女はかりんとう入り蜂蜜をカップに入れてお湯を注ぐとすぐさまかき混ぜる。闇野が大変らしく少女――大堂寺まゆらもそれに忙しそうだったので少年、光太郎は勝手にポットから紅茶を注いだ。
「はい、ロキ君。少しのど楽になるよ」
「ありがと‥‥まゆら」
「ロキ君が季節はずれの風邪引いた上に光太郎君まで病人拾って来て〜看護士さんじゃないんだから‥‥」
「それじゃあまるでボクが馬鹿みたいじゃないか‥‥」
「夏風邪は馬鹿がひくってか?。でも風邪流行ってんだぜ、しらねぇの?」
「風邪のマイブームなんてどうでもいいの!。私のマイブームはミステリー!!な事だもん♪」
どうしたわけ?と盛り上がってる繭良を尻目に小声でロキに尋ねるが返ってきたのはさぁ、と気のない返事。半分咳き込みながら蜂蜜を飲んでいるのでのどが痛く、それどころではなかったのだろう。
「最近ひましてるからじゃない?。目立ってまゆら好みの事件とか起きないしね」
「ああ、なーるほどね」
「光太郎さん、お目覚めになりましたよ、彼」
「悪い悪い、人が来たから安心しちゃったみたいでさ。あそこなんであの時間人通りないかな‥‥。君が通りかからなかったら日射病で二次災害だったぜ‥‥。あ、感謝してるよ、ほんと。ありがとな」
「‥‥」
妙に気さくなんだが‥‥やっぱり着物も帯も女物のような気がする。繭良とロキも気付いたのか三人供妙な視線で彼に注目する事になってしまった。
「あ、自己紹介まだだ‥‥。俺、時雨 石蕗しぐれ つわぶき。よろしく♪」
「(いや、そういうことじゃないんだけど‥‥)ボクは此処の主人あるじでロキ。ちなみに風邪ひきだからお兄さんあんまり近付かない方がいいかも」
「風邪!?。風邪はいかんな‥‥。うっかりと肺炎なんかになったりしたら命が危ない‥‥。俺体弱いから油断するとふっといっちゃうんだよな‥‥」
「(今は全然そんな風には見えないけどね‥‥?)私、大堂寺繭良です。よろしく♪石蕗さん。お名前変わってますね?石蕗って確かお花の名前‥‥、女の人みたい。着物も」
「!!」
何故そこをずばっと突っ込む!?とロキ、光太郎が横で驚きのポーズを取り青ざめるがそう言われてみればそうですねぇ?と闇野が後押し。心配された彼、石蕗の反応はと言えば先ほどと変わらず気さくな笑顔で「やっぱり分かったか〜」と照れた真似。
「姉貴のなんだよな、これ」
「まさか女装趣味とか?。そんなわけないですよね〜?」
「(だからやめろ!?突っ込むな繭良!)」
「違う違う。俺滅多に外出ないから自分の着物ふくないんだよね。親父の借りると片幅がなくて様になんないし。んで、唯一サイズが合ってあんまり不自然でないのがこれ。似合ってる?♪大堂寺さん」
「はい〜♪とってもお似合いです♪」
なんだか嫌な会話になってるな‥‥と思いながら光太郎は先ほど担いだ石蕗の腕を思い出した。年齢不詳だがそれにしたって光太郎と同じか上くらい。なのにその腕は多分女性の繭良よりも華奢で肩幅も繭良と大して変わらないのではないだろうか。病弱で家から出られないと言う話を体で裏付けしているような‥‥。
「えーとこちらが闇野さん。あ、そうだ君は?少年」
「垣ノ内光太郎」
「おう!光太郎君。ほんとにありがとな♪拾ってくれて」
「光太郎でいいよ‥‥石蕗サン」
「じゃあ俺も石蕗でいいよ。君と大堂寺さんは高校生か‥‥。いいねぇ若くて♪」
「そう言う石蕗さんはおいくつなんですか?」
「俺?、俺はね、えーと今十九だから、今年で二十歳かな?」
‥‥見えない。ってーかその年と外見で高校生を若いというな‥‥。
と光太郎は思ったがその年になってみないとなかなか分からない物だ‥‥。十分若いじゃないですか、と言う繭良に石蕗が礼を言っていると誰かのくしゃみ。誰かって彼しかしないわけだが‥‥。
「大丈夫ですか!?ロキ様」
「ああ、うん大丈夫」
「毛布一枚でそんなとこいるからよ!。あ、やだ‥‥闇野さん!熱ありますよ!」
「大丈夫だよ。此処は探偵社だよ?。探偵のボクがいなくてどうするんだよ」
「どうせ人なんかこねぇだろ?。まぁ来たら俺が代わりにやっとくから寝てろって♪」
「探偵?」
珍しく真顔な、しかし好奇心を含めた表情で石蕗が聞く。その顔に少々驚きながらああ、うんと答えてロキは少し咳き込んだ。
「此処は燕雀探偵社、んでボクが此処の探偵。御用の時はいつでもどうぞ」
「そして第一助手のまゆらちゃんです♪」
「あれ?私が第一じゃないんですか?」
「ちょっと待て!俺が三って事か!?」
「いいね♪探偵」
と石蕗はすぐに破顔する。病魔が逃げ出すような笑みで。しかしあの一瞬の真顔の隅に、確実に彼を蝕む死の影を、ロキは目にしてしまったような気がしていた。
「俺が憧れる者第二位だよ♪」
「え?じゃあ第一位は?♪」
「大怪盗。これぞ男のロマン♪」
「(何処が‥‥?)それじゃあボクの敵だよ‥‥石蕗サン」
「あはは♪そうだな。じゃあ敵は退散するよ。長居して悪かったね、名探偵君。ちゃんと御礼に来るからお兄さんが近寄れるように風邪ちゃんと直しておくように!。甘くみると死ぬからな?風邪は。じゃあまた」
「(何でこの人が言うと説得力ないかな‥‥)努力しときますよ、お兄さん」
笑いながら――何故かふわふわしと感じさせる足取りで――石蕗が出て行くと闇野はロキを抱え上げベッドへ強制送還を謀る。ロキの方もすっかりと抵抗する気力を失っていた。繭良は残った毛布をたたんでいる。持ちやすくしてから運ぶつもりなのだろう。
「なんか石蕗さんて変わってるねぇ。あんなに存在感あったのにいなくなったらそれもふっと消えちゃうの」
「ああ、なんか変な人だったよなぁ‥‥」
「‥‥。ねぇ!?石蕗さん帰り道分かるのかしら!?」
「あっ!何か気になると思ったらそれだ!。やべ‥‥完全に寝てたから多分分かんねぇぞ!?。俺送ってくる!」
「あ、光太郎君!ついでに名前の由来聞いといてね♪」
「‥‥言う事はそれだけか!」
言い返しながらも光太郎は鞄を掴み、玄関を飛び出した。左右を見回すと右の道にぼーっと立っている――ようにしか見えなかった――石蕗の姿を見つける。
「石蕗サン!」
「あっ光太郎」
気付いて振り返った石蕗の笑みが妙に優しく見えて一瞬光太郎はドキッと足を止めた。けれど気がつくと少し気の抜けたようなさっきの破顔だった。
「石蕗でいいって言ったじゃん。でも良かった。この辺全然来た事なくてさ、探偵社の方に戻ろうと思ってたんだよ」
「やっぱり‥‥。家何処?」
「三丁目の方」
「あ、じゃあ俺と同じ方角だ。こっちだよ」
と光太郎はあれ?と笑っている石蕗を連れて逆方向に歩き出した。まったくどっちが年上か分からない程の危なっかしさだ‥‥。大体この危なっかしさで、しかも一人で一体何処へ行っていたのだろう。
「あ、そうだ。大堂寺がさ、名前の由来聞いといてくれってさ。よっぽど気になってるんだな、あいつ」
「名前?。ああ、おかしな話だよ。親父がね、姉貴に良く似てたから名前も似せようって良く確かめもせず石蕗で届け出出しちまって、後で男だって知ったらしいんだ。まぁ石蕗ならともかく姉貴と逆だったらまずかったな‥‥」
「何でそんな間違いするのか分かんねぇけど‥‥。お姉さんの名前は?」
椿つばき。で俺が石蕗」
「‥‥確かにやばいわ‥‥」
「だろ〜?。その名前でがっこ行ってたら間違いなく苛められてたよなぁ」
と石蕗は冗談っぽく笑うがその女顔ならそうでなくても十分苛められたかもしれない。似ていると言っていた姉の顔がその横顔から十分想像できる。
「学校言ってねぇの?石蕗は」
「うん。家からほとんど出ないって言ったろ?」
「まぁ、行かなくて正解だな。先公も親もうるせぇし‥‥。もっとも、俺は今親元にはいねぇんだけどな。でも本とか読めねぇとヒマじゃねぇ?」
「読めるよ。読み書きは椿が学校で習ったのそっくりそのまま教えてくれた。他のも大体高校レベルまではできるかな。椿頭いいし教えるのもうまかったからな」
「それを理解できるって事は石蕗もじゃん‥‥。なんで高校レベルなんだ?。大学は家から出て行ってるとか?。あ、それかもう卒業して嫁に‥‥」
「‥‥。椿は死んだんだ。高校卒業を目前にして、うちに高見舞台ってのがあるんだけどね、そこから落ちて死んだ。親父の後を追ったとか、事故だとか警察は勝手に言ってたとけど俺はそうは思わない」
微笑をうっすらと残したまますっと細めた目は、笑っているようには見えなかった。静かな怒り。それはすなわち‥‥。
「ごめ‥‥石蕗‥‥」
「え?。ああ‥‥気にするなって。こっちこそごめんな、変な話して」
「なぁ、それこそロキに相談したらどうだ?。あいつガキだけど結構探偵としてはすごいんだぜ」
「『俺も一目置いてる』ってわけだ。いいね、羨ましいなぁそういうの」
「?‥‥」
「ああ、うち此処。送ってくれてありがとな。寄ってく?」
時雨と表札のついた大きな門に光太郎は一瞬唖然とした。そういえばこの辺りに時雨とかいう旧家があるのは何処かで聞いていた。そんな珍しい姓は近所に五万といるわけではなかろう。そのまま呆然としていると腕を掴まれてさっさと中に連れ去られる。
「ただいま。琴さん、友達連れて来たからお茶出して〜。光太郎、冷たい抹茶飲む?」
「あ、うん、もらう」
「琴さん抹茶二つ。俺の部屋に運んで」
「はいはい、分かりました、坊ちゃま」
置くから老女の返事が聞こえると石蕗はさっさと下駄を脱ぎ捨て、素足のまますたすた廊下を歩いて行く。慌てて光太郎も上がって走って行くと狭い階段を上がっていく石蕗の後姿に追い付く。一階建ての平屋に見えたが二階なんてあるのだろうか?。
「ストップ、光太郎。そこで待ってて。俺部屋着に着替えるから」
「‥‥何で?。男同士なのに‥‥」
「男の着替え見たいのか?お前」
「いや、いいっす‥‥」
「手術の痕があるんだ、胸のとこばっくりとね。見せたくないし、見たくもないだろ?」
「‥‥そりゃ見たくない」
と大人しく光太郎は階段の昇りはじめで座った。ごとごと上の足音を聞きながら待っているとやがて上がってもいいと知らせる声。階段を上りきるといきなり頭は部屋の真中にあった。屋根裏を改造した部屋なのだ。壁には何枚もの、何種類もの白い羽を描いた絵が飾られている。そして上には南の空を向いた窓。夜はさぞかし綺麗な星空が見られるのだろう。
「すげぇ!」
「ありがと。俺がヒマしないように親父が改造してくれた部屋なんだ」
「へぇ、いい親父さんなんだ。あ、水‥‥。少しもらってもいいか?」
「!やめろ!光太郎!」
ミネラルウォーターのペットボトルを手にした光太郎だがすぐさま横から石蕗に取られてしまう。ただ事ならぬ石蕗の表情になんだよ‥‥と呆然と尋ねると部屋の隅にある洗面所に向かった石蕗はそこに花瓶から抜き取った花を置く。そして見てろよ、と呆然と見ている光太郎の前でミネラルウォーターを流しにあけた。
「!!」
鼻を突く刺激臭、もくもくとあがる白い水蒸気のような煙。それが消えると花は茶色く焦げ切っていた。それを流し去るように石蕗は水道の蛇口をひねる。
「これの中身は水じゃなくて濃塩酸だ。もし飲んだりしたら‥‥分かるだろ?」
「‥‥なんで部屋に塩酸なんて置いてるんだよ‥‥」
「置いてるんじゃないさ、置かれてるんだ。‥‥いや、摩り替えられてると言った方がいいかな。この家で信用していい食べ物は未開封の物。それと琴さんが作ってくれた物だな」
「お前‥‥それって‥‥」
「しっ琴さんが上がって来る」
座布団を引っ張り出すと石蕗は何事もなかったように光太郎を座らせ、自分は琴さんなる老女を迎えに階段に向かう。しかし気遣う声に笑いながら老女は自力で部屋に上がって来た。
「ぼっちゃまがお友達を連れて来られるなんて初めてじゃないですかねぇ」
「あ〜そうかもなぁ」
「坊ちゃまを訪ねていらして下さるなんてお嬢様が亡くなって以来ですよ‥‥。どうぞ、よろしければお茶菓子も一緒に」
「あ、どうも」
「坊ちゃまと仲良くして差し上げてくださいませね。そうだ、お夕飯を召し上がっていかれてはどうです?。お若い人のお口には合わないかもしれませんが」
「それいいね♪。じゃあお願い、琴さん」
いや、その‥‥と光太郎が言っているにもかかわらず良かった良かったと琴さんはお茶とお菓子を置いて退散して行く。足音が完全に聞こえなくなるとお茶菓子をつまんでいた石蕗は悪いね、とようやく口を開く。
「琴さん年だし、椿が死んだ時はあっちが心臓発作起こすんじゃないかってくらいショック受けてたから、俺が命を狙われてるなんて事知られたくねぇんだ」
「でも石蕗‥‥これは警察に‥‥」
「‥‥証拠は何もないさ。それに、椿を事故死で片付けた奴らに命を預ける気はないよ。俺が死んでも奴らは事故で片付けるさ」
「どうして!?」
「もし塩酸なんて飲んでもすぐに気付くだろ?。普通の人間なら死にはしない。あわよくば飲まなくても、驚きでもしたら俺は死ぬ、心臓麻痺で」
「!致死量の毒じゃなくて、少量で発作と見せかけて殺そうって事か‥‥」
それなら確かにまともに調べられないか‥‥。司法解剖の対象にはなるだろうけど事故で片付けられる可能性が高い。くそ!。
「俺が何とかする。絶対犯人をとっ捕まえて‥‥」
「落ちつけって光太郎。それだけ分かってればそうそう驚かないって。そんなにやわな神経もしてないしな」
「けど‥‥」
「大丈夫、もう少しなんだ‥‥」
と石蕗は視線を壁に向けた。和服姿の少年と少女らしい写真。その上のカレンダーには二日後に大きな赤丸が。
「あれ、椿さんと石蕗?」
「ああ、似てるだろ?。椿が死ぬ前の正月の写真さ」
「思ってたより年近いんだな。年子?」
「いや、同い年だよ、俺と椿は」
「‥‥じゃあ双子か」
「双子でもないんだな」
はっ?と光太郎が聞き返すと石蕗は笑って写真を手に取った。もしかしたら四月生まれと翌三月生まれで学年的には同い年か?と考える光太郎を見て外れ、と見透かしたように石蕗は笑った。
「椿は本妻の子でね、俺は妾の子。まぁ今は本妻に収まってるけど、俺と椿は五日椿が上なだけの腹違いの姉弟なんだ」
「‥‥五日違いの姉弟!?」
「呆れた話だろ?妻が孕んでるのに同じ時期に他所の女孕ませてんの。心臓弱いくせによくやるぜ、スケベ親父が。まぁその負い目みたいに椿は健康体で、親父の病は俺が全て引き継いだけど」
「石蕗‥‥」
「椿の母親は椿が一歳の時に死んでね、だから俺達は誰にも気兼ねする事無く姉弟でいた。椿は俺の友達で、先生で、総合するとやっぱり姉だった」
そう言って石蕗は写真を戻す。彼女の話は終わり、と言う合図だろうと光太郎は受取り、お茶に口をつけた。
「ん‥‥冷たいけどうまい‥‥。俺抹茶は温かいのしか飲んだ事ねぇや‥‥」
「琴さん特製だからな♪。なぁ光太郎、イカロスは、空を飛べたと思うか?」
「イカロス?」
「ギリシャのさ、『昔ギリシャのイカロスは』って歌があるだろ?」
「ああ、太陽に近付きすぎて翼が溶けて死んじまったあれだろう?。馬鹿だよな、俺ならもっとうまく飛ぶのに」
「‥‥、椿とおんなじ事言うのな、お前。おもしろい奴‥‥」
くすくす笑う石蕗に光太郎はなんだよ、と非難の視線を向ける。悪い悪いと謝りつつだってな、と石蕗は続けた。
「椿もいつも『私はイカロスの代わりに向こう岸を見るの』なんて言ってたから‥‥。向こう岸なんて見れるわけもないのに」
「何でだよ。羽つけて飛んできゃ見れるだろ、鳥みたいにさ」
「駄目なんだよ、光太郎。イカロスみたいに腕に羽を付けても天使みたいに背中に羽を付けても人間が人間であって、何か別の付加要素がない限り絶対人間は空を飛べないんだ」
「だから、何でだよ」
「鳥が飛べるのはね、胸筋が異常発達しているからってのが一つ。翼で飛ぶのにはものすごく力がいるからね。人間の四十倍程の筋肉がそこだけであるって話だよ。それと二つ目。鳥は人間に比べて体重に占める骨の重みがすごく軽いんだ。例え鳥並の筋力があっても骨がある限り人間は飛べない。別の力が翼を動かさない限りは。でも体格的にも飛ぶには不都合が多すぎるからね。人間は絶対翼では飛べないよ」
「なんだ、つまんね。ちょっとあこがれてたのにな、翼を広げて空を飛ぶのって。鳥にでも生まれ変わんない限り無理って事か‥‥」
そういうこと、と笑って石蕗は壁にもたれた。けれどでも‥‥と続きのある言葉に光太郎は石蕗を見上げた。まるで、愛しい者の首を求めるような仕草で石蕗の手がそばにかけてあった青いバックに白い羽の描かれた絵に手を伸ばす。中心にいくほど深くなる蒼は海か空か区別がつかない。中心の黒い染みは汚れだろうか。いや、人型‥‥?。
「椿はずっと信じてた。イカロスは飛んだと。そしてその先には向こう岸があったと‥‥
「イカロスか‥‥」
ならばこの絵は、彼女が焦がれる翼を失った若者が海へと沈んで行く、哀しい絵なのだろう。
「‥‥うわっ!何だ携帯か‥‥。大堂寺?‥‥。ちょっと悪い、石蕗」
「いいよ。後で番号教えて。殺されそうになったらかけるから」
「馬鹿‥‥その前に警察電話しろ!。もしもし、大堂寺か?」
あ、光太郎君?と向こうで言っているらしいが電波が悪くて聞き取れない。悪い、かけなおす、と電話を切って光太郎はにこにこ笑っている石蕗を振り返る。
「いいね♪付き合ってるの?」
「ば、‥‥馬ー鹿!誰があんなミステリー女なんかと好き好んで!。付き合ってんのは別だよ別!。ちょっと下行ってかけなおすな」
「どうぞ♪ごゆっくりと♪」
「妙な誤解すんな!!」
ったく、と憤慨しつつ、笑い続ける石蕗を一括して光太郎は下へ降り、縁側の方に歩いて行ってアンテナを伸ばす。これなら大丈夫だろう。そして繭良の携帯へと電話をかけた。
「あ、大堂寺。何の用だ?」
『わざわざかけなおしてくれたの?。無事着いたかなって思って電話しただけなの』
「それだけか‥‥怒るぞこら‥‥。今ロキの所か?お前」
『うーん半々。闇野さんの代わりに夕飯の買い物に向かってるとこ。そういう光太郎君は家?』
「いや、石蕗の所。なんか夕飯ご馳走してもらう事になっちまって」
『あ、いいなぁいいなぁ♪私も石蕗さんのおうち行きたーい♪』
このまま延々いいなコールが続きそうな気がして光太郎は電話を切ろうとボタンに手をかける。がふと思い直して暴走中の繭良に声をかけた。
「なぁ大堂寺、二年くらい前なんだけどさ、石蕗の姉で椿さんって人がこの家で死んでるんだ。それについて調べといてくれるか?」
『いいけど、どうして?』
「お前の好きな『ミステリー!』の予感だよ。明日、ロキの所で」
『うん♪あ、ねぇちょっと石蕗さんに代わって♪私もそっち行ってもいい?』
「あ?今石蕗此処にいねぇんだよ。じゃな」
「人の家で何やってるの?まったく‥‥。どっから入り込んだのよ」
驚いて光太郎は手をかけていたボタンを思わず押してしまった。電話の向こうで非難の声が聞こえていたので後が怖い‥‥。しかし今の恐怖を脱するべく光太郎は振り返った。中年の女性だ。四十代に手が届くか届かないかくらいだが洒落たスーツ姿の美人である。しかし、雰囲気は恐ろしいが‥‥。
「いや、俺は石蕗のその‥‥ダチで‥‥」
「友達?。あの子に友達なんて‥‥」
「葉月さん勝手に決め付けないでくれよ。光太郎、気にするな。琴さんが呼んでるから行こうぜ」
「ちょっと石蕗!?。光太郎ってあの垣ノ内さんの家の不良高校生じゃないの!」
「(むっ‥‥)不良で悪かったな!」
「葉月さん、俺の親友に妙な価値つけないでくれる?。行こう、光太郎。ああ、それから葉月さん、琴さん夕飯用意してくれてるらしいから男と用がなければご一緒にどうぞ」
行こう、と肩を叩いて石蕗は女性に背を向ける。気付かなかったが意外と背は高い。ほっそりしているのに光太郎と大差ないようだ。その肩越しに光太郎は先程の女性がいないか振り返った。いない‥‥。
「あれ叔母かなんかか?石蕗」
「いいや?母親。何となく俺に似てるだろ?」
「はっ?‥‥母親!?。だってお前‥‥『葉月さん』って呼んでたじゃねぇか‥‥」
「だってあの人が俺産んだの十六の時だもん。弟が出来たようなもんだったんじゃないかね?。葉月さんて呼んでやらないと怒るんだよ。男の前で子持ちだと思われるの嫌らしいし」
「十六‥‥俺と代わらねぇじゃん‥‥。でも、お前とか椿さんはさっきのあれに育てられたんだろ?」
「まぁ‥‥一歳くらいまで葉月さんとかばあさんが育ててくれてたらしいけどこの家に来てからは琴さんが母親だったな」
「‥‥なんか今さらお前のハードな生活を思い知った気がするよ‥‥」
「あはは♪悪いけど光太郎、運が悪かったらまだ続くぞ」
まだ‥‥?と呟いて光太郎は少し気が抜けた。その間だが続かない事を願った光太郎だが、淡くもそれは崩れ去る事になる‥‥。


 「最悪だった‥‥」
時雨家での感想を聞かれて出た光太郎の第一声がこれだったロキのベッドに頭を伏せる様子に闇野はまたも病人が増える事を危惧したという。
「よくあんなとこで生活して生きてるよ、石蕗」
「えー?そんなにひどいの?。その上命狙われてるんでしょ?」
「〇∞$£§◇▼」
「え?何?ロキ君」
「『病人が寝てるんだからそう声を張り上げるなまゆら』とおっしゃられてます」
あんたは通訳か‥‥と光太郎は思ったがしかし大いに助かる。声が掠れて何を言っているのか分からないのだ。ロキの意見が聞きたかったのでまったく闇野サマサマだ。
「で?どうひどかったの?」
「(聞いてないな‥‥この女)まず母親、いきなり人の事コケにしやがって‥‥。しかもそれが十六歳の時に産んだとかでろくに子供の世話もしやがらないんだと。おまけに息子の石蕗に男が寄り付かねぇとかで自分の事名前で呼ばせてるし」
「それは確かにひどいわね‥‥。子供ならママの事『お母さん』とか『ママ』ってちゃんと呼びたいもの‥‥」
「だろ?。でももっとひどいのは叔父の方だぜ。お前の母親は金目当てに結婚したとか椿を殺したのは石蕗だとか遺産泥棒だとか散々わめきやがんの。夕食中にだぜ?。よく黙って聞いてるよ‥‥石蕗は」
「ん〜でも平然とご飯食べてる石蕗さんが容易に想像できるあたりが怖いわ‥‥」
「多分お前が想像してんのと同じ顔だぜ‥‥」
と光太郎自身その表情を思い返す。平然と無視しながら琴さんお手製の煮物を褒めちぎり光太郎にお茶のお代わりを訪ねる。と此処まで思い出すとロキがまた何事か言ってきた。
「『遺産って何のこと?』とおっしゃってますけど、分かります?」
「いや、俺も詳しくは‥‥」
「ふふっこんな時こそまゆらちゃんにおまかせ♪。椿さんの事もばっちり!調べて来たわよ♪」
「『頼もしいんだか不安なんだが‥‥』と申されてます‥‥」
まったく聞いてない繭良は楽しげに探偵ノートを取り出す。これを見るのもなんだか久しぶりな気がする‥‥。そして得意げにかけようとしたぐるぐる眼鏡は全員一致の大反対で光太郎に取り上げられた。
「ちぇーっ久しぶりなのに。まぁいっかぁ。まずね、二人のお父さん、時雨家十二代目当主が亡くなったのが一年前の二月。心臓発作で病院に運ばれて急死してるわ。、まぁこれは特に何もない、ただの発作だったみたい。医師の死亡診断書も出てるわ。そして問題の椿さんが亡くなったのが翌月の三月九日、卒業式の前日よ」
「え?一年前??‥‥。だって石蕗は今年二十歳だろ?行ってれば大学二年のはず‥‥」
「もう、しっかりしてよ。大学に入る年に亡くなったって事でしょう?。学年は高三でも年数的には一年と数ヶ月なの。それで死因は自宅にある高見舞台ってとこからの転落死。自殺と事故と他殺。あらゆる方向で調べた結果、警察は事故と断定してしてるわ」
「なんで夜そんなとこに?」
「舞いを舞ってたらしいのよ、日本舞踊。卒業式の後に新しい舞いのお披露目会があるらしくてその会場になる高見舞台で練習して立って石蕗さんも証言してるわ。いつもは一緒に行って舞の評価をしてあげてたらしいんだけどその日は体調が優れなくて石蕗さんは部屋で寝てたそうよ。そして椿さんが落ちて行く悲鳴を聞いた」
「‥‥『その高見舞台についてもう少し詳しく説明してくれ』とおっしゃってますけど」
ちょっと待ってねと繭良はノートをぺらぺら。‥‥しっかりと調べてあるらしい。抜かりないと言うか恐るべき、繭良‥‥。
「高見舞台はやぐらみたいな造りで高さは二階建ての建物くらい。上は舞台で下に手動のエレベータがついてるわ。」
「舞台に柵は?」
「あったそうよ。柵は大人の腰上くらい。壊れてた所とかはなかったらしくて、疲れて柵の上に座って休んでた時に誤って落ちたというのが警察の見解よ。実際椿さんは練習の後よくそこに座ってたらしいわ」
「『舞台の下は土?石?』と聞かれてます」
「芝生よ。庭石はあったけど、椿さんの落ちた所にはなかったみたい」
「『それならおかしい、普通五階以上の高さがないと人は転落しても死なない、まして下が芝生なら‥‥』と申されてます」
「でも、芝生にはちゃんと落ちた痕も、出血の痕もあったそうよ。それに後頭部を打ってるから死ぬ事だって‥‥」
石蕗の目が言ってた、あれは殺人だと。ロキと同じようにあの高さで芝生に落ちて人が死ぬ事がない事も石蕗は知ってた‥‥。けどどうやって芝生に落ちた椿さんを転落の傷だけ残して殺せた?。石蕗のように心臓が弱かったならともかく‥‥。
「光太郎君、携帯鳴ってるのそうじゃない?」
と繭良は自分の携帯を見せる。着信はない。なら、と自分の形態を見ると確かに。しかし画面に出ているのは知らない番号、公衆電話か?。
「もしもし?」
『あ、良かった、間違いかと思った。光太郎、ちょっと大変な事になったんだ』
「石蕗!?また殺されかけたのか!?」
『いや、殺されたのは俺じゃないんだけどね』
「馬鹿やってんなら切るぞ!?こら!。殺されてたら電話かけてくるわけないだろが!」
『怒りっぽいな‥‥光太郎‥‥。いや死んだのは俺じゃなくて叔父貴なんだ。しかも椿と同じ、高見舞台から落ちて』
半分程置いてはぁー!?と光太郎は大声で叫んだ。繭良達が耳を押さえているので石蕗ももしかしたら受話器くらい落としたかもしれない。
「今家だな!そっち今から行くから!」
『あ、今俺琴さんと警察。帰れるけど今誰もいないからゆっくり来て』
「分かった、じゃな‥‥」
「何?何があったの?光太郎君」
「さっき言ってた叔父が高見舞台から落ちて死んだって‥‥」
「はい?なんですか。‥‥はい、はい。とりあえずお二人とも石蕗さんのお宅に行ってくれとの事です。それからまゆらさん、新山警部から情報を仕入れて下さい。『どうせ椿さんの事も真澄ちゃんから仕入れたんだろ』と」
やっぱり分かった?‥‥と繭良はごまかし笑い。光太郎はどうりで詳しいわけだ‥‥とようやく納得のため息。とりあえず今はロキの言う通り時雨宅へ向かおう。


 石蕗の部屋に通されると繭良はその窓と絵に感嘆する。お気に入りは石蕗が愛でるようにしていた落ちて行くイカロスの絵。
「これすごく綺麗ね〜深い蒼が」
「大人しく座ってろよ‥‥こっちが恥ずかしいんだからな‥‥」
「じゃあ静かに見てる」
そう言って繭良はだいぶ大人しくなった。そうすると階段を上がってくる足音がようやく聞こえてくる。そしてひょいっと覗く石蕗の頭。
「あ、いらっしゃい光太郎。ごめん呼び出しといて。シャワー浴びてきた」
「いいよ、別に」
「お邪魔してまーす石蕗さん」
「うわっ!?大堂寺さん!?。参ったなぁ女の子の前でこんな格好じゃ失礼かな?」
「あ、別に気にしないですよ?。うちのパパもいつもそんな格好ですから」
神社にいる時の着物とはまた違うだろうが‥‥。家では石蕗のような寝巻きなのだろうか‥‥?。それならいいけど、と石蕗は寝巻き姿のままひょこひょこ上がって来た。しかし、肌寒かったのか袖を通さず肩に上着を羽織る。
「ねぇ石蕗さん、この絵イカロスですよね?、ギリシャ神話の」
「あれ?大堂寺さんは知ってたんだ。光太郎はすぐに気付かなかったんだよ?。そう、これは落ちて行くイカロスの絵。羽は水面に浮かんでてイカロスは海に沈んで行くんだって椿が言ってた‥‥。あ、椿ってね、俺の姉貴。これ描いたのも椿なんだ」
「この部屋にあるの全部そうなんですか?。すごいですね〜、全部イカロス‥‥。でも飛んでる所は描かなかったんですね?椿さん」
「ああ‥‥言われてみれば‥‥。飛びたいって言ってたわりには落ちてるとこしか描いてないなぁ、変な奴‥‥」
「あ、私も♪イカロスみたいに羽付けて飛んでみたかったんです〜♪」
「やっぱ女の子だなぁ。でもね、イカロスってのは‥‥」
このノリは長引く‥‥そう判断して光太郎は二人の間に割って入り、その場に座らせた。水を刺されて何?と二人が見上げているが一人ため息を付き、遅れてその場に座る。
「石蕗‥‥遊びに来たんじゃねぇんだぞ‥‥。どういう事だよ‥‥昨日のあの親父が椿さんと同じ死に方したって?」
そう言えばそれで呼んだんだっけっとそれで来たんだっけ、というセリフが二人の口から同時に漏れる。石蕗はともかく繭良まで忘れるとは‥‥「ミステリー!!」にも陰りが?。
「あんなとこから落ちたって死ぬわけないんだよね〜。下芝生だしさ。何でだろ?」
「石蕗、落ちてたのも同じとこなのか?。つまり、柵を越えて下に落ちた、と」
「いや、柵の切れてる外の梯子のとこから落ちたらしいよ。一応事情聴取はされたけど、やっぱり事故としてみてるのかな‥‥」
ごめんな〜巻き込んでと石蕗は笑っているが‥‥今さら遅い。タイミングが素晴らしくずれているが本人に悪気はないのであろう‥‥。
「あ、大堂寺さん夕飯食べてっても大丈夫?。琴さん多分もう用意してると思うんだよな‥‥」
「え?でもご迷惑じゃ‥‥」
「ううん、食べてってくれた方が嬉しい♪。今日はなんとマグロ尽くし〜♪。冷凍のが一本丸ごと手に入ったって昨日から張り切ってたんだよね♪琴さん」
「丸ごと‥‥。そんなでかい冷蔵庫があんのか?この家には‥‥」
「うん〜、分家の人とか来ると結構な人数になるしさ。琴さん年だから業者の人に届けてもらって保存しといたりとか、結構よく使ってるよ」
「ぼっちゃま〜!ご飯できましたよ」
あ、お呼びだ、と石蕗は大堂寺を誘ってさっさと降りて行く。結局何のために呼ばれたんだ?と光太郎が脱力しているとあ、と石蕗が戻って来る。
「なぁ光太郎、今日うち泊まれる?」
「え?泊まってもいいけど?、何で?」
「別に。ただ、叔父貴までああなっちまって‥‥少し不安だし‥‥。あ、別に明日も学校だろうし大変だったらいいよ」
「はいはーい!まゆらちゃん立派にボディガード務めさせていただきます!」
「あ〜、大堂寺さんはうちの人が心配するから帰ろうね‥‥。送ってくよ、光太郎もいるし」
「てめぇは家にいろ‥‥俺送ってから。また倒れられちゃたまんねぇって」
大丈夫だよ〜と主張しているがこれは無視だ。それに繭良には事件の方を頼まなければならない。
これ以上石蕗の大ぼけに付き合わされてたまるかっての!。


 目を閉じていたロキにそっと繭良が声をかける。眠っていたわけではないらしい。昨日よりましになったかすれ声で何?‥‥と不機嫌そうに返す。
「学校行ったりしたから遅くなってごめんね。石蕗さんの叔父さんの件色々調べたよ。死因は前頭部を激しくぶつけた事による転落死だって。でもそんな硬い物はなかったのに‥‥って新山さんぼやいてたわよ。それから死亡推定時刻は午後十時から十二時。お手伝いの琴さんは朝食の仕込みをした後自室で就寝」
「石蕗は俺と電話で話してた。中断したのは石蕗がトイレに行った十分くらいだよ。実際石蕗は二階の屋根裏が部屋だから階下に降りてってなるとまぁ早い方だな。母親の葉月は外出してたらしい」
「‥‥ねぇ、二人とも、時雨家に大きな冷蔵庫とかない?」
「え?、なんで分かったの!?。確かにあるって言ってたよ、石蕗さん。マグロ一匹入る大きい冷蔵庫があるって」
「高見舞台のエレベータは上に上がっていた、違う?」
「ますますびっくり‥‥。その通りよ。二段階式の調節でエレベータの天井部分は舞台の中央部分の床になるようにされてるんですって。悪戯されないようにって事もあってエレベータは普段あげっぱなしになってるそうよ。だから被害者は外付けの梯子から舞台に上がった可能性が高いわ」
それが何か?と光太郎が訴えるとまぁね、と答えてロキは口元を覆った。二、三度漏れる咳。まだ本調子でないらしい。さらにロキの言葉を待っていると闇野が紅茶を持って入って来る。
「光太郎さん、まゆらさんどうぞ♪」
「あ♪ありがとうございます♪」
「闇野君、昨日のケーキある?」
「はい♪切って来ますね♪」
「まゆら、喉痛い‥‥昨日の蜂蜜飲みたいんだけど」
「大堂寺家特製カリン入り蜂蜜ね♪。あれ?私昨日ちゃんと置いてったっけ?。すぐ持って来るね」
ロキがわざと人払いしたのに気付いて何だよ、と光太郎は不満げな視線を向ける。明らかに、ロキは彼にだけ、何か話そうとしているに違いなかった‥‥。
「光ちゃん、石蕗さんの部屋の電話、ううん、家の電話でもいいんだ。子機付きだね?」
「ああ、そうだよ、それが?」
「石蕗さんはトイレに行くと言って一度電話を切った、違う?」
「そうだよ。‥‥何が言いたいんだ」
「電話の子機ってね、親機の約百メートル範囲なら離れていても使えるんだ。高見舞台ならそう離れていないだろう。そして十分で二階から行って殺して帰って来るのは無理でも、その場にいたなら呼び出した相手を突き落とすだけで済む」
「石蕗が殺したって言いたいのか!?」
ロキの推理を否定する、否定したいと思ったのは初めてかもしれない。正確には少し違う、とロキは静かに言って目を伏せた。思わずその言葉を待つ‥‥。全てを否定できるだけの力が自分の中にはないから。
「殺意は半々、賭けだったと思うよ。けれど、かなり倍率の高いね。火事になった時、人間ってどうすると思う?光ちゃん」
「それは非常口から外に‥‥」
「って言うのがお手本だね。でもね、実際は入って来たのと同じ所から出ようとするのが人間の心情なんだ。だから緊急の時、大半の人間が元来た道を戻る。多分石蕗さんは叔父さんに『潔白なら何でもない脅し』をかけた。そして下には死の罠。恐れおののいた叔父さんはその罠にはまって‥‥」
「あの様ってわけか。しかし罠って‥‥。!冷蔵庫‥‥そういうわけか‥‥。じゃあ椿さんもきっと同じ方法で‥‥」
「光ちゃん、昨日石蕗さんが君を泊めたのには意味があると思うよ。今日という日を待ったのは‥‥。彼を止められるのは君だけだ。行って。それでね、『ボクはまだ貴公にお礼に来てもらってない』って伝えて‥‥」
「‥‥」
頷きもせず光太郎は部屋を飛び出した。それが彼なりの肯定である事は、ロキには確かめるまでもなく分かっていたし。なになに?と入れ違いに入って来た繭良は事情を察したのかあっと盆の蜂蜜お湯割をこぼしそうになる。
「何か分かったの!?。ねぇ!?私も‥‥」
「まゆら、光ちゃん一人で行かせてやって」
「ロキ君‥‥」
「理由はボクから話すよ。座って。まずはそれ頂戴」
「‥‥うん」


 羽柄といささか洋風な振袖が床をすべる。ポット代わりの小さい水筒から入れたお湯で抹茶をたて、青年は静かにそれを喉に流し込んだ。その静寂を破って耳に入って来る慌しい足音。そして荒れた息遣い‥‥。
「此処にいたのか‥‥石蕗」
「‥‥いつも忙しそうだね、光太郎は。ゆっくりお茶でも飲む?。お菓子はないけどもう一杯なら入れられよ」
「‥‥。石蕗‥‥大事な話がある」
「うん、お茶入れながら聞いてあげる」
またこいつは女物の着物なんか着て‥‥と光太郎は呆れるがすぐに表情を変えて高見舞台に上げる。そして姿勢を正して石蕗の前に正座した。
「何?話って」
「率直に言う、自首しろ。一緒に行ってやるから‥‥。お前に完全な殺意はなかった、そうだろう?」
「‥‥叔父貴の事?。俺が、殺したって?」
にこっと光太郎に向ける笑みには邪気がまるでなかった。多分ロキの後押しがなければ、自分でその答えに行き着かなければ鵜呑みにしただろう。石蕗には純真無垢と言えるような所が大部分を占めているけれど、落ちて行くイカロスのように、深い所に黒い染みも‥‥。
「お前、一昨日は俺と電話で話してたよな。でも、自分の部屋にいたんじゃない。此処からかけてたんだ。試しに、琴さんから子機を借りて来たんだ。これの短縮から俺の携帯にかけると‥‥ほら、繋がった」
「親機から百メートルくらいの場所からなら電波が届くんだったよね。でも‥‥それだけかい?」
「‥‥。お前はあらかじめ此処に叔父を呼び出しておいて約束の時間前に電話を切った。エレベータは上がってたから叔父は梯子から上がって来る。お前は叔父に椿さん殺害の事実を突きつけたんじゃないか?。人間は火事になると安全な非常口よりも自分の入って来た入り口に向かいやすい」
「それと同じ、追い詰められた叔父貴は自分の上がって来た梯子に向かおうとして、転落‥‥。でも下は芝生だよ?光太郎」
「この家にはでかい冷蔵庫があるんだよな?。椿さんはおそらくその冷凍庫で凍らされたでかい氷の上に落とされ頭を打って死んだ。でも今回は夏、夕立もないのにその場所だけ濡れてれば不審に思われただろうな。まぁ回収すればいいんだろうが今回冷蔵庫には別の物があって氷を作るのはリスクが大きかった。でも、同時にそれはとっておきのものでもあった。だから一昨日にしなきゃならなかったし、昨日大堂寺を引き止めなきゃならなかった」
「氷以外の物?。‥‥光太郎、まさか‥‥」
石蕗が堪えきれずに笑い出すと光太郎も自分の考えが馬鹿らしくなって思わず表情を歪めた。けれど自分の道に沿うような石蕗の回答、間違ってはいない。
「そうだよ!お前は氷の代わりに凍ったマグロを置いといてそれであのおっさんを殺したんだ!。証拠は俺らの腹の中!。人間殺した凶器人に食わせやがって‥‥」
「あれ?ステーキ肉で人を殺して食べさせるって話あるだろ?。ミステリーじゃ常識じゃないの?そういうのって」
「ぜってー違う‥‥。それにマグロで殺されたなんておっさん可哀相過ぎる‥‥」
「はい、光太郎お茶」
全面的な否定はない。何となく認めてけれど見事にはぐらかされた‥‥。ふわふわと取り留めなく逃げる雲。それが、石蕗と対峙するはめになったその時から感じていた感覚‥‥。まぁいい、それならそれでも、と光太郎はお茶を煽った。
「ちゃんと皮むいたから大丈夫だよ、後で洗っといたし。あ、でも大堂寺さんには秘密にしといてね♪やっぱり女の子には刺激が‥‥」
「っ!!」
「‥‥大丈夫?光太郎」
お茶を吹きだすのは何とか堪えたが妙な所に入って光太郎は咳き込んだ。その背を実にのんきに声をかけながら石蕗が撫でる。
「何でお前はそう唐突なんだよ!。はぐらかしてたかと思えば急に認めやがって!」
「え?でも光太郎はちゃんと分かっててくれたじゃん。俺がやったって事も、完全な殺意はなかったって事も」
「あ‥‥それは‥‥」
「最も、あの探偵君が大部分ヒントをくれたみたいだけど。さすが、光太郎が一目置くだけの事はあるね」
「石蕗‥‥」
「別に逃げる気はなかった。無事に今日を迎えられれば。此処に光太郎がいるのはちょっと予想外だけど」
すっと石蕗が立ち上がる。白い着物のシルエットが、その体をさらに儚く見せた。そのまま飛び降りでもするのではないかと光太郎も慌てて立ち上がるが舞台の中央で止まって外を見やる。
「椿はね、叔父貴に殺されたんじゃないよ。叔父貴は何も知らずに氷を運ばされて後で共犯だと脅されただけ。虚勢を張る事しか出来なかった男さ。分かってたから‥‥ちょっと罠にかけた事、後悔してる。それでも、俺の椿を奪った事には変わらない」
「‥‥殺意は否定しないって事か?」
「椿は俺の全てだった。病院とこの家しか往復しない俺にとって外の世界は椿だけ。椿となら、対岸にだって、何処にだって行けた。椿が語ってくれる地平線が俺の世界の最果て。だから椿が殺された時、俺の前から全世界が消えた。椿を奪ったその存在を、俺は許さないよ、葉月さん」
「!!」
「石蕗‥‥私はあんたの事を‥‥」
まっすぐな石蕗の視線を辿ると梯子を上がって来たらしい葉月が立っていた。このまま石蕗が突き落とすのではないかと思ったが何故か光太郎はその視線を遮る事が出来なかった。
「俺のため?。俺のために椿を突き落として、脳死状態にして、椿がドナーカードを持ってたからこれ幸いって俺に心臓移植しようって!?。それが俺のため!?」
「な‥‥椿さんとお前‥‥」
「椿と俺は、双子みたいに心臓や他の臓器、殆どがお互いに適合してた。二人で決めてドナーカードも書いた。でもそれは‥‥故意にどちらかを生かすためじゃなくてもしどちらかが死んだ時、どちらかが生き残るためだった!。でも残念だったね‥‥椿は脳死で留まらず死んだ。おまけに司法解剖されて、心臓も何もかもぼろぼろに‥‥」
「私は!あんたが可愛かったのよ!。息子だもの‥‥。あの子は私の娘じゃないもの!。あんたに生きて欲しかった!。私の心臓じゃあんたにはあげられないんだから!」
「だから?だから俺が自分の命より大事だった椿を奪ったと?。俺も大事だけど金も男も大事、はっきりそう言ったら?葉月さん」
「やめろ!石蕗。それ以上言っちゃ駄目だ」
うん、と素直に笑った石蕗の顔が泣き出しそうに思えたのは気のせいだろうか。けれど、石蕗も母親を慕ってて、姉への思いの挟まれて‥‥辛そうにしているのが分かったから、止めなきゃならなかった。ぎゅっと袖を掴む手にそっと逆の手が重なる。
「石蕗、殺すなよ。この人はお前を生んだ、母親なんだ」
「分かってるよ。葉月さんに対する復讐は最初から決めてたんだ。だから椿の生まれたこの日に、椿の死に装束で‥‥」
「?、石蕗?‥‥。!やめろっ!!」
「石蕗!?いやぁ!」
するっと掴んでいた袖がすべり、その白い面影のはしを再びつなぎとめようと力を込める。けれど。羽のようにふわりと手の中を掠め、石蕗の体は中に舞った。下にはただ緑の芝生。死んでない‥‥そう信じて光太郎は身を翻した。
「おばさん!この電話使えるから救急車呼べよ?。ちゃんと住所言うんだからな‥‥」
「つわ‥‥ぶき‥‥」
「しっかりしろ!。てめぇの息子が死んでもいいのか!?」
死ぬなよ‥‥石蕗‥‥。こんなの‥‥こんなの俺が許さないからな!。
半ば駆けるように梯子を降り、光太郎は石蕗の落ちた所へ回り込んだ。白い着物が羽のように飛び散る。羽の中で、石蕗イカロスは胸を掴み、浅く喘いでいた。
「心臓発作‥‥。石蕗!薬は!?」
「俺の体、もう、保たなかったんだ‥‥。いつ来るのか分からない最後の発作に怯えるくらいなら自分で‥‥」
「馬鹿野郎!。‥‥なんで‥‥なんで俺じゃ駄目だったんだよ‥‥。俺じゃ椿さんの代わりになれなかったのか?。俺は椿さんが知らない事だって知ってるつもりだし、イカロスが見れなかった対岸だって‥‥俺が見つけてやる‥‥。俺がお前の世界になる!」
「光太郎‥‥」
「ストップ!。『もっと早く会いたかった』なんてごめんだ‥‥。時間なんか問題じゃない。結局俺はお前の中に留まれる程大きな存在じゃなかったんだよ‥‥。でもな‥‥俺嬉しかったよ‥‥。『不良高校生』なんて枠に押し込まれて、また色眼鏡で見られるのかって‥‥石蕗にもそう見られんのかって思ったのに‥‥。お前は俺の事親友だって、言ってくれた‥‥。嬉しかったんだ‥‥」
「‥‥なら俺だって‥‥。光太郎は、俺が親友って言ったのに、否定しなかった。結構、怯えてたんだ、言うの‥‥。親友なんて、今まで使った事もなかった‥‥」
上半身を抱き上げた石蕗の呼吸が和らぐ‥‥。このままおさまって、このまま生きてくれ‥‥と光太郎は石蕗に気付かれないよう、願った‥‥。
「眩しかった、光太郎は‥‥。ずっと一緒にいられたらって、思ったよ‥‥」
「ずっと思ってろよ!ずっといよう‥‥。ずっと俺此処にいるから‥‥」
「でも、椿は一緒にいるよりずっとわがままな、贅沢な道を取った。俺の中にありったけの自分を置いて、自分で自分の存在だけ盗み取ってった‥‥。羨ましかった‥‥。だから光太郎‥‥俺を覚えてて、恨んでも、憎んでも、ありったけ強烈に俺を覚えて‥‥」
「馬鹿!!。記憶なんて薄れるんだよ‥‥生きてなきゃ、人間は忘れんだよ‥‥。ロキが言ってた。『ボクはまだ貴公にお礼に来てもらってない』って。約束破んのか?それで平気なのか?お前」
「イカロスは太陽に近付きすぎて羽が溶け、落ちて行った。俺も、同じなのかもしれない‥‥。イカロスの翼は結局飛べなったよ‥‥。だから探偵君に聞いといて。『君の鷹の衣なら、対岸まで飛んで行けるの?。飛べるなら、俺にいつかそれを貸してくれる?』って」
「そんなわけわかんねぇ事てめぇで‥‥」
支えていた体が崩れて行く。自分を支える力すら失っていく‥‥。駄目だ‥‥と否定して引っ張りあげるが、もうぐったりと光太郎にその身を任せるだけ‥‥。もう、自分の力では石蕗の体は動かない‥‥。
「答え、教えて‥‥。椿と対岸で待ってる‥‥。ずっと待ってるから‥‥」
「勝手に約束作んな‥‥。俺はまだ同意してねぇぞ‥‥。聞けよ!石蕗!!」
イカロスの翼は太陽の光に奪われて、千々に散っていた。イカロスは翼を失って、その翼を追って羽に身を埋めて、命を失った。遠い昔話の中で焦がれた夢と、見続けた現実の狭間に落ちて行った‥‥。


 太陽は高く輝いて、その暑さは真夏並みだった。イカロスはその太陽に焦がれて、石蕗はその眩しさに目を眩ませて落ちて行った‥‥。思い出してまた涙が出そうになる。二人が会ってたった三日。だけど、他の誰と過ごした時より大事な時間‥‥。イカロスたかが伝説の事で半分本気で論議し、カーテンを全開にして星空を見上げながらくだらない談笑を交わした一夜。
「やべ‥‥これじゃ石蕗の思う壺じゃん‥‥」
悔しいから思い通りにはならない。忘れてしまえとさえ思った。なのに、そう思うほどに深く、根ざした枝はさらに広がる‥‥。
「光ちゃん。落ち着いた?」
「ロキ‥‥」
「へぇ‥‥おもしろい部屋‥‥」
「わぁ‥‥すごい絵ですね‥‥。みんな海と羽です‥‥」
「それイカロスの絵ですって、闇野さん」
と、どやどや三人ほど部屋の中に押しかけて来る。なんだよ‥‥と言いながら見下ろされているのが嫌で光太郎は立ち上がった。
「あのね、琴さんが一枚ずつ此処の絵持ってってくれって」
「でも‥‥椿さんが描いた絵だろ?。それに、全部石蕗の物だ」
「その石蕗さんが、生前それとなく琴さんに言っていた事だそうですよ」
「まぁボクらはともかく光ちゃんは好きな絵一枚もらってきなよ。うちの探偵社にイカロスはねぇ‥‥」
「ミスマッチ‥‥。光太郎君、あの絵がいいよ絶対。石蕗さんお気に入りだったし一番綺麗!」
そう言って繭良は海に沈んでいくイカロスの絵を指差した。光太郎もそれを見やって迷う事無く歩み寄る。人の制止も聞かず、散々わがままを言い残して去っていった石蕗への、気持ちばかりの仕返しを込めて‥‥。
「!、光太郎さん何か落ちましたよ。‥‥『太陽の下にイカロスを連れて行ってごらん、光太郎。石蕗』!?」
「!!イカロスって‥‥この絵のイカロスか?‥‥」
「光太郎君!!」
窓の下で繭良が急かす。頷いて光太郎も絵を手に窓の下に立った。それを背の低いロキにも見えるようにしてやりながらゆっくりとイカロスの部分を太陽に向ける。
「!?」
きらっと何かが一瞬眩しく反射する。ゆっくりと角度を変えると絵の中のイカロスに銀色の翼が生え、その奥に銀色の太陽が現れた。
「!!イカロスが‥‥飛んだ!?」
「まるで海の中から見上げているみたいですね‥‥」
「きれーい」
「アナモナルフォーゼ、『騙し絵』か‥‥。銀のラメか何かの上に水彩絵の具が塗ってあったんだ。こっちのメモは‥‥。メモの字やメモの破り口がまだ新しいね‥‥。推測だけど、自殺したその日に気付いてメモを書いたんじゃないかな」
「‥‥っか野郎‥‥。こんな部屋に閉じ込めとくから気付かねぇんだよ‥‥。イカロスはちゃんと飛んでるじゃねぇか‥‥。なのに何でお前は、落ちちまったんだよ‥‥」
明日はまだ決まってない。少なくとも自分はそう思う。体調の悪化だって椿が死んで気落ちしたのがそもそもの原因だろう。もっと早く会えていたら、もっと早く、自分がその手を取って引っ張りあげてやらなくてはならなかった‥‥。
「ロキ、石蕗が言ってた。お前の鷹の衣なら対岸まで飛べるのかって。もし飛べるなら自分にそれを貸してくれるかって。何の事だか俺には分かんねぇけど‥‥、俺はもう一度石蕗に会えたらなんて答えりゃいい?」
「もちろん、飛べるさ、何処までだって。でも石蕗サンイカロスはもうちゃんと銀の翼を持ってるじゃん?。それで飛んで行きなよ」
「分かった‥‥。てめぇで飛びやがれ!石蕗の大馬鹿野郎!!」
イカロスが飛べようが飛べまいが、どちらでも良かった。時が進み、大きすぎる翼を手にした今は。ただ飛べると信じ、大地を蹴った者がいた事、それだけで十分‥‥人はまだ飛べるのだから‥‥。
 PRESENTED BY AIR☆SKY

あとぐぁき
うおう‥‥意外な残業に追われて自分的期限が当に過ぎた。そして明日のために眠らねばぁ〜。しかし結構長いのぉ。VOL.Tは光ちゃんの友情編♪(爆笑)いや、走りたい人はそっちに走ってくれてもかまわんですがご自由にご想像ください。こちらに乱入しないように♪。まぁあんまり長々と書いてても仕方ないのでこのくらいに。‥‥いつも人様に差し上げる物でも気にせず長々書いてるのにおかしいって?。フフッTにご注目♪Uもそして‥‥ですわ♪。では♪あでゅ〜♪。

夕闇を待つ暁の部屋へ