お日サマと向日葵さんと女神様と♪

深い深い、海の底はあまりに遠すぎて
伸ばした手はあっさりと波間に掻き消され
底は闇の支配下で何一つ見えない
いつもなら暖かなこの身が
この氷を溶かしてくれよう
けれどこの刃はこの冷たい刃は
鋭く胸を突いて離れない

 「いって〜!」
通常的痛みが現実を呼び戻す。上を通過していた本がもろに額に――しかももろに角がだ――当たった。何でこんな所を本が、と思ってソファに身を起こすとあら、特に抑揚のない声。
「ごめんなさい、落ちたわ」
「‥‥(落としたのではなくて?‥‥)まじ痛いっすよ、飛鳥さん」
「胸が?おでこが?」
「‥‥両方‥‥」
時々意地が悪い‥‥彼女も‥‥。
此処は静かで深くて、居心地が良いから、『海の底』に一番『近い』から、傷心の自分は此処を拠り所としてしまう。だが彼女は時折こうやって自分を呼び戻そうとする。そう、『海の底』に沈んでいたい自分を無理に引き上げようとする。
「まったく‥‥お構いなく、飛鳥さん。俺は適当に腐ってるからそのうち自力で出てくよ」
「私本当に心配してるのよ?」
「!‥‥」
「いい年した若人が家の中でじっくり腐ってたらそのうち熟成してきのこでも生えて来るんじゃないかと思って」
なんだ‥‥そういう心配か‥‥。
彼の淡い期待をあっさりと裏切って彼女はさらに続けた。
「あ、そうそうこの間園芸店で『しいたけ君』って見かけたの。もう原木からしいたけが出てるのよ。しかも千円。ちょっと欲しかったんだけど、荷物持ちが‥‥」
「飛鳥さん、千円じゃしいたけ一パック買った方が断然得だと思う‥‥」
「あら、木からきのこをもぎ取るのがいいんじゃない。お得さを感じるわ。それに私しいたけなんて嫌いだもの、食べるのは。だから今日あたり荷物持ち兼、しいたけ処分役なんてどう?引きこもり君」
「食わないならまじ買うなってば‥‥。しっかし、最近随分お茶目になってきたんじゃねぇ?飛鳥さん」
私はいつでもまじめよ?とすらりとした表情で彼女は言ってのける。もちろん先程とは一片も変わっていない。けれど‥‥。
まじでちょっと期待したのに‥‥損した‥‥。
「しょうがないわね、失恋して引きこもりなんてまだまだ甘いわ」
「あ〜す〜か〜さん!。此処何日何度も言ってるけど石蕗は男!」
「でも、好きだったんでしょ?。でなきゃ君ともあろう人が、そこまで落ち込むわけがないわ」
「っ‥‥。飛鳥さん、すっげー誤解招くからその発言止めてくれ‥‥」
「男が男を好きと言ってすぐに同性愛を連想する現代がどうにかしているだけよ。気にしないで」
「‥‥石蕗はたった数日でも、ほんとに俺の親友だったんだ。心の半分、ほんとに掻っ攫っちまうくらいさ‥‥」

――忘れないで――

――覚えていて――

とイカロスは堕ちながら言った。悔しいから忘れようと太陽は思った。けれど眼下にちらつく蒼が、イカロスを屠った海がイカロスの姿を思い返させる。
「親友って、何?」
「え?」
「一緒にいなきゃ生きられない人?。それとも、心の半分を一緒に葬ってまで哀しむべき人?」
「よく、わかんねぇよ、飛鳥さん‥‥」
「親しい者の死を哀しむ動物は人間だけよ。どうしてか分かる?。本能以外の感情を持ったから。支えを必要とするからよ。死に逝く者が可哀相だからじゃなくて、失う自分が可哀相だから、死人を弔って死人のために涙を流す事で自分を慰めてるの。でも、君は優しい太陽ね」
「?。!」
すとん、と前触れもなく飛鳥は彼、光太郎の隣に腰掛ける。しかも無頓着に近かったものだから思わず光太郎は仰け反った。けれど飛鳥の方はまったく気にしていない様子で膝の上で頬杖を付き、表情を隠すためかその上に顎を乗せた。
「私の知ってるアポロ(太陽)は近づいて来るイカロスなんてまったく気付かなかった。ただ馬を駆る事に夢中だった。ポセイドン()もよ。海は自分の上を走る無作法な人間を叩き落すのに必死だった。他の神々も誰一人、翼を失って堕ちて逝く若者になど目を留めなかった。私はそんな彼が可哀相で、でも私は翼なんて持ってなくて、何も出来ない自分が悔しかったの‥‥」
「飛鳥さん?。それ、いつの話?」
「‥‥昔よ。ずーっと昔。石蕗さんは幸せね、こんな太陽に出会えて、見取ってもらえて、ね?光太郎君」
「‥‥その、君って付けるのやめてくれねぇ?。飛鳥さんの方が年上だし、なんか今さら君付けで呼ばれるのも‥‥」
「‥‥じゃあ、光太郎?」
「!」
そう呼んで、笑いかけるのは別の顔。飛鳥の笑みに別の顔が重なって、光太郎は思わず胸を押さえて視線を逸らした。そんな光太郎の頭を、飛鳥の手がそっと撫でる。
「重症のようね、太陽さん」
「いやぁ‥‥久しぶりの飛鳥さんの笑顔にくらっときて‥‥」

「虚勢を張るような相手なの?私は。見くびられたものだわ」
「そう言う意味じゃないけど」
「痛い痛い、って散々言ってるんだもの。今さら意地を張る必要はないわ」

――癒して‥‥――

その言葉を素直に言うべき相手なのだろうか?。素直には言えない、素直には受け取ってもらえない。けれど自分は知っている。彼女は癒してくれる人なのだと。全てゆだねてもいい相手なのだと。けれど、彼女は何処かで自分が癒す事を拒絶している。そんな気がするから素直にその肩にはもたれかかれない。
「しょうがないわね、光太郎。失恋の痛みを忘れるには新しい恋をするのが一番よ」
「え‥‥?。ってだから恋じゃないって!飛鳥さん!。そういう事言ってると襲うぜ?まじ。こんな美人前にして毎日毎日お預け喰らってるんだからな、俺」
「あら?君に私の相手が務まると思って?」
「あ、ひっでー。馬鹿にしてんな?。でもさ、俺ほんとは飛鳥さんの事‥‥」
絶妙なタイミングで飛び込んできたドアチャイムの音に飛鳥は未練の欠片も引き摺らせずにすっと立ち上がってドアの外に出て行く。聞き耳を立てるつもりはなかったのだがすぐそこが玄関であるためにドア越しに嫌でも声が入ってくる。
「はい‥‥。あら、ホタルちゃんじゃない。久しぶりね、どうぞ上がって」
「いえ、いいんです此処で‥‥。あの、光太郎来てますか?」
「‥‥どうして此処にいると思うの?」
「此処何日か、知り合いの女の子誰とも一緒じゃないし、光太郎がよく行ってる探偵社の男の子が此処じゃないかって」
「(ロキの奴よけーな事を‥‥)」
「ん〜。つまり光太郎の事が大好きなホタルちゃんとしては私と光太郎が二人っきりなんて心配だわ!と飛んで来てくれたわけね?」
飛鳥の言葉に光太郎が思わず動揺するのと同時にホタルの方も動揺していたらしく違いますー!と弁明の声が聞こえたのはしばらく後だった。こっちが聞いていると思ってからかってるな?と光太郎はドア越しに飛鳥を睨みつけ、力なくソファに身を投げ出した。
「ただ、私は‥‥、光太郎が最近元気がないから、その‥‥。此処にいて光太郎が元気になれるならいいんです、ちょっと、心配だっただけ‥‥」
「元気ではないわね。光太郎、今大失恋した後で腐りきってるの」
「(平常心、平常心‥‥)」
「え?まさか飛鳥さんに?」
「ふふっ相手が私だったらこれほど落ち込みはしなかったでしょうね。叶わぬ恋だったのよ、何せ相手は男‥‥」
「飛鳥さん!!石蕗は親友だったって言ってんだろ!。‥‥あっ‥‥」
ほら、出て来たわ、という飛鳥の声ではっと冷静になり、ホタルと目が合う。このまま部屋に逆戻りするのも手だが余計に恥ずかしい気もする。と迷っているとぱたん、と飛鳥の手がドアを閉めた。
「天照大神を天岩戸から出すのも一苦労だわ。お迎えも来た事だし、お帰りなさい、引きこもり君。それとももう『しいたけ君』かしら?」
「飛鳥さん!私そういうつもりじゃ‥‥」
「せっかく来たのにはいっ、と帰しまうのか?」
「二人っきりにはなりたくないわって事?。まぁわがままなお二人さんね。いいわ、お茶でも入れましょう。二階へどうぞ」
すっと二階へと身を翻す飛鳥を追ってホタルはその後ろを、光太郎は大股に追いかけてその隣に並んだ。どういうつもりだよ!と睨む視線はさぁ、とあっさり流されてしまう。階段を上り、客用の茶室に入ると飛鳥は二人にソファを勧めた。
「あ、手伝います、飛鳥さん」
「いいのよ、座ってて。あら‥‥。茶葉が切れたみたい。すぐに買って‥‥」
「大丈夫飛鳥さん。俺プリンスオブウェールズ(おうじサマ)よりウバ茶(うばや)の方が好きだから」
空の缶を覗いて言う飛鳥に光太郎はすっかりと勝手を知ってしまった棚からウバ茶の入った缶を取り出してほい、と飛鳥に差し出す。恨めしそうにか飛鳥は少し光太郎を見上げ、嘆息して缶を受け取った。
「あ、俺ロイヤルのミルクでね♪。飛鳥さん特製の♪」
「なら自分でミルク温めなさい。君はもはや客人ではなくてよ。それとホタルちゃんの分もね。ホタルちゃん、ミルクの方が好きだったわよね?」
「は、はい、お願いします」
「そうだ‥‥お茶菓子がないわ、誰かさんが入り浸るから」

「そいつぁ失礼しました。別にお茶菓子なんかなくても‥‥」
「あ、私調理実習で作ったスコーン持って来たんです♪。これ食べましょう?」
まぁ用意がいい事‥‥と小声で呟き、飛鳥は大人しく食器棚の方に戻って来た。そして別の食器棚に隔たれたキッチンの方に入る。
何企んでるわけ?飛鳥さん」

「失礼ね、好きな女の子の前で弱みを見せたくないって君の感情が筒抜けで見てて歯がゆいだけよ」
「誤解の無い様に言っておくけどそれはちが‥‥」
「ただ、仲良しサンドイッチの中身は辛いって事が一番かしら」

「俺とホタルがパン‥‥?。俺は‥‥飛鳥さんが無理やり二人っきりにさせようとするから抵抗してるだけ。いつでも女の味方だもんな、飛鳥さんは」
「違うわよ?私は『お気に入り』の味方なの」
じゃあ『お気に入りランク』が上のホタルの味方な、と光太郎が訂正すると飛鳥は隣でくすっと笑ったらしかった。斜め下に見るその表情はいつもの何か企んだ笑みではなく、ずっと優しくて『仕方のない子‥‥』とでも言いそうだった。‥‥錯覚かもしれないが‥‥。
「そう卑屈になる事も、早決する事もないんじゃない?光太郎。ただね、私の肩は‥‥二人が同時に寄りかかって安心してくーくー寝ちゃえるほど安定してはないのよ‥‥。せいぜい一人が精一杯かな。でもあんまり光太郎が大きいからもう疲れちゃったわ」

―― 一人じゃなくなったなら、二人ならお互いに寄り添ってお眠りなさいよ ――

言われて思わず光太郎は視線を下ろした。ずっと大きく感じていた存在は、こうやって見ると小柄で、おそらく病弱だった石蕗の肩よりも細くて華奢。それでも、頼りたくなってしまうから不思議だ、彼女は。
「なんて、光太郎だから言えるのよ?こんな事。他の人、特に女の子相手だと強く見えちゃうらしいから、私」
「女限定でもねぇけどな。気付かないでごめん、飛鳥さん」
「スコーンならジャムよね、はい。これと、スプーン持って。後は私がやっておくから」
「って言ってるそばから飛鳥さん!」
「君の傷は私には治せない。私は石蕗さんじゃないから、石蕗さんが開けていった穴はふさげないわ。ホタルちゃんもよ。ホタルちゃんの傷は私には治せない、私は光太郎じゃないんだもの。光太郎、開いた穴を別の物でふさぐ事はできるわ。そして、自分が傷つけてる女の子くらい自分の手で癒してあげなさい」
と一式の載ったトレイを押し付けられ、体をくるっと反転させられると駄目押しに背中を押された。

――時々、彼女はこのためにいるのではないかと思う。迷う者の背を押す、そのためだけに‥‥――

仕方なく光太郎はトレイを手にソファで待っていたホタルの隣に立つ。今さら隣いいかなんて聞くのも恥ずかしい。黙って腰掛けるとホタルの視線がわずかに頬に当たった。
「‥‥食べてもいいか?」
「うん‥‥」
大きめのスコーンを手に取って少しジャムを乗せて口に運ぶ。さくっと良く焼けたスコーンはジャムの甘さを除けばそっけない味がした。けれど‥‥。
「うまいな、これ」
「そう?温かい方がもっとおいしいの。今度は作りたて食べてね」
――あ、やっと笑った‥‥――
とそっけなく光太郎は心の中で呟いた。思えば、ずっとホタルも沈んだ顔をしていた。それが飛鳥の言うように自分の事を心配して、なのかは知らないが‥‥。
「お茶、入ったわよ。‥‥いいわね、二人仲良く並んで、お似合いよ」
「その表情で言われると嫌味なんだか誉めてんのか分からん‥‥」
「そんなんじゃないですよ。もう、飛鳥さん意地悪‥‥」
「そう?。私は本気で言ってるんだけど?。太陽と石蕗もいいけど、太陽に映えるのはやっぱり‥‥ね、光太郎」
「え?なんですか?それ」
「ね?光太郎、良く似合ってるわ」
赤くなった頬を隠すように口元を手で覆い、愚痴ろうとするがうまく声が出なかった。と、インターフォンが鳴って飛鳥はそのまま受話器を取りに行ってしまう。何の事?と尋ねるホタルに言い訳する気力も沸いてこない。
「はい‥‥ご苦労様です、今行きますわ。宅配便ですって、取ってくるわ」
「飛鳥さん!?
「そのまま逃げたりしないっすよね‥‥」
「‥‥。何故かしら?今日はやけにもてるわね、私‥‥。宅配便なんて持ったまま逃げるわけないでしょう。あ、私にもホタルちゃんのスコーン残しておいてね。全部食べたら恨むわよ、光太郎」
「何で俺が‥‥」
「だってさっきおいしそうに食べてたじゃない?。心配だわ」
全部なんて食べないから‥‥。と飛鳥を追い出してはた、と光太郎はホタルと二人きりになった事に気付く。成り行きとは言え――いや飛鳥の作戦か?――自分で追い出した事に後悔しながらそのまま去るのも馬鹿らしいので元の位置に戻る。
「‥‥(気まずい‥‥)」
「光太郎‥‥亡くなったその、親友の事聞いてもいい?」
「‥‥なんで?」
「何でって‥‥、どうしたら光太郎に此処まで『思われる』ようになるのかな‥‥とか思って、参考にしようかなとか」
「!馬鹿野郎!!。んなんじゃねぇよ‥‥。お前が思ってるような綺麗なもんじゃねぇよ!。石蕗の死も‥‥俺の『思い』も‥‥。馬鹿な事言い出すな!」
「!‥‥ごめん。そんなつもりじゃなかったの。やっぱりうまく言えない‥‥。言えないけど‥‥」
心配だったの、そのまま壊れてしまいそうで‥‥。
と呟く横顔は、誰かを、光太郎を心配しての憂いではない。明らかに哀しんだ、傷付いた目‥‥。
「‥‥。わりぃ、言い過ぎた。俺石蕗が死んでからちょっと不安定で。普通じゃなかったから、あいつの死に方。ごめん、今は言えねぇ。整理ついてねぇから」
「ん、いいよ。泣いてる光太郎ってのもちょっと見物だったけど、私じゃ役不足なのね」
「そういうわけじゃ‥‥。なんてーの?。お前にはこんな腐りきってるとこ見られたくなかったし。こういうのって俺って柄じゃないだろ?。もっとこう、太陽(おれ)らしく戻って、それから‥‥」
「何食わぬ顔で?。私は、やだな‥‥。私は飛鳥さんになりたい‥‥。光太郎は私に弱い所見せないで、いつまでも完璧で素敵な私の『彼氏代理』なの?。それ以上、私には進む余地すらないの?」
「ホタル‥‥」
「私は、光太郎が好き‥‥。光太郎が私の事心配して『彼氏の振りしてやる』って言ってくれて嬉しかったの。でも、『振り』はあくまで舞台の上だけなんだよね」
涙を見せられて光太郎は思わずホタルの肩に手を伸ばしかける。しかし『好き』と言う言葉に手は止まった。此処で慰めの言葉などかければ、またホタルを傷つけてしまうのだろうか?。じゃあ、自分はホタルをどう思っている‥‥?。
「なんて、ね‥‥。元気出してね!光太郎。私はそろそろ帰るね」
「待てよ!ホタル!」
ホタルが立ち上がろうとしたので思わずがっと肩を掴んでしまう。痛かったかもしれないとは考えたがかまわずその肩ごと体を引き寄せて抱きしめる。ホタルが驚いたのか少し身じろぎしたようだがそれでも力は緩めない。
「光太郎?‥‥」
「見上げんなよ!。相当ひどい顔してるぜ、きっと。好きになりかけてる女の子の前で、いつでもいい格好していたいと思うのは仕方ないだろ?。俺だって男だぜ?。だから、お前には涙は見て欲しくない」
「なりかけ、か。じゃあまだ『彼氏代理』ね‥‥」
「‥‥キスしたら好きになるな。ついでに元気も出るな、きっと」
「‥‥光太郎がそれでほんとに元気になるんだったら‥‥」
「旅行中の両親からだったわ。クール便だから何かおいしいものだといいわね。そしたら一緒に夕飯でも、どう‥‥」
発砲スチロールの箱を見ながら入って来た飛鳥はようやくその状況に気付いて歩みを止めた。その状況、すなわちホタルの顎に手をかけて顔を近づけている最中だった光太郎、そして手をかけられているホタル。
「‥‥。私ったらとんだピエロだったみたいね。ごめんなさい続きどうぞ。って自分の家なのにどうして私が出て行くのかしら?。まぁいいわ、じゃあね」
「ああ!!待った待った!飛鳥さんの手料理すっごい食べたいな!俺!」
「何か聞こえた気がするけど気のせいね、さようなら」
「うわっきっつ!!(が〜ん)」
「あ、飛鳥さん、届け物、なんだったんですか?」
「そうそう、クール便なのよね。おいしい物♪おいしい物♪」
すでにおいしい物と決め付けているし‥‥しいたけでも入っていたらどうするのだろう?。しかし、はしゃいでいる飛鳥というのも珍しい――どのくらいのはしゃぎ具合かと言うと表情にはいたって変化はないのだが語尾に♪マークが付いているような気がするくらいだ――。その飛鳥は発泡スチロールに巻かれたガムテープと自分の綺麗に伸びた爪を交互に見て最後に光太郎に目を向ける。
「っ〜〜‥‥。開ければいいんでしょうが!開ければ!」
「あら?何も言ってないのにありがとう」
「目で言ってたでしょうが‥‥。『爪が傷付いたりしたらやだから開けたくないな〜』って」
「ついでにさっきまで人を口説こうとしてたのにさっさとホタルちゃんに手出ししようとしてるんじゃないわよってね」
「え!?
発泡スチロールから剥ぎ取ったガムテープを隙あらばその口に張ってやろうと企みつつ、喧嘩売ってる?と光太郎は一応尋ねる。答えは予想通りううん?といつも通り。予想外に笑みのおまけがついてくるがそれだけだ。
「冗談だよ、冗談、さっきのは。大体飛鳥さんがのせたんだろう?」
「ほんとに?光太郎」
「おう、だって俺飛鳥さんの事‥‥」
「さっきの続きね、是非聞きたいわ」
「‥‥。姉貴みたいに思ってるんだぜ‥‥。姉貴に手出すわけないだろ?」
赤面しながら放った言葉は意外にも飛鳥を放心させるほどの威力を持っていたらしい。唐突に意外な返事が返ってきたせいか飛鳥はきょとん、とした表情のまま止まっている。記念写真を撮りたくなるような見事なまでの放心状態だ。
「‥‥そ、それは‥‥光栄‥‥なのかしら‥‥。ちょっと私の予想にない返事で本気で困っちゃったわ‥‥」
「そこまで言うか‥‥?」
「ちょっとそれは‥‥ひどいかも‥‥」
「まぁ、でも良いわね、生意気で手間のかかる弟、退屈しそうにないわ。でも『妹』を泣かせたら許さなくってよ?。他人の情事を覗き見する趣味はないから内線で呼ぶわね。これの中身は後で公開っと。続きどうぞ、お邪魔虫は去りますから」
「続きって‥‥もうそんな気ねぇよ‥‥。しかも何だよ生意気で手間のかかる弟って‥‥」
「まぁ、飛鳥さんなりに嬉しいってことじゃない?きっと‥‥。(結構確信突いてると思うけど)でも‥‥妹か‥‥。嬉しいな、飛鳥さんみたいなお姉さん欲しかったもの」
と微笑むホタルを見下ろし、女は得だぜ‥‥と舌打ちして光太郎は顔を逸らす。続きだとかもうほんとにそんな気分ではない。ただ、ホタルが笑みを取り戻したからそれでいいと思う。それで、自分も立ち直れそうだと。不意に名前を呼んだホタルの顔が視界に飛び込む。
「なんだ?ほた‥‥っ!!
ホタルの小さな両手が頬を包む。そして、唇、と(おぼ)しき感触が柔らかく自分の唇を包んだ。自分の顔中を熱くなった血が駆け巡っていくのが分かる。ほんの数秒でそれは離れていったがお互いの顔が離れて言葉を搾り出すのにはたっぷり数十秒かかる。
「ほた‥‥る?‥‥」
「‥‥だったんだから!」

「え?」
「ファーストキスだったんだから、責任重大だよ?光太郎‥‥。今度は光太郎からしてよね‥‥」
「‥‥。俺が、太陽に戻ったらな」


『ねぇ痛いの?お日サマ』

と向日葵さんが言いました。

『大丈夫だよ、女神様が言ってたもの。この棘を抜けば大丈夫、もう痛くないよ』

お日サマを苦しめていた棘を向日葵さんは抜いてあげました。
途端に棘は溶けて向日葵さんの根元に降り注ぎます。まるで涙のように。

『もう泣かないで、お日サマ。イカロスの代わりに、私があなたを見上げ続けているから‥‥』


あとぐぁき
 光ホタ同盟加入記念だったんですけどね。‥‥。この話イカロスの次なので夏に書いたものなんですけどね。‥‥まぁ♪北海道では大雪ですって♪(爆っ)
 ってーかうちのはホタ光(笑)えあ的には光ちゃんの方が弱めな感じなのよね、何故か。そして趣味のために飛鳥嬢出演(にたっ)まだまだ続くぜ飛鳥嬢!!
あ「結局うちの両親は何を送ってきたのかしら?」
え「ずばり!みかん種の大王様(←と勝手に決める)ざぼんサンだ!!。今が旬!(だったのさ、原稿時は。でも旬を過ぎても中華街には山積みだった、さすが中華街‥‥(もちろん購入に走ろうとしたえあは即座にベルに止められました♪))」
光「んなもんクール便で送るな!!
ホ「カニとかがいいですよね♪クール便なら」
あ「とりあえず何でもいいからおいしい物‥‥」
結論:飛鳥嬢はおもしろそうな事以外はとりあえずおいしい物に反応するらしい(おわし)
追記:HPあっぷ前に呼んでいただいたたつみんさんからのコメント♪
<‥‥所でざぼんとカニじゃ九州と北海道で居る場所が極端に違うのですが‥‥。しかもざぼんはクールじゃなくて普通に箱詰めで送られてくるよ>
えあ:はい、その通りです♪(←確信犯)うちも親戚が時々ざぼんサンくれるので知ってます(笑)だからやっぱり中身はカニかなぁ♪(タラバちゃんや〜♪)
夕闇を待つ暁の部屋へ