決意の継承

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僕らは寮の部屋で、もうすでにどちらのベッドか分からない
――と言うのも僕らが気分で交換してばかりいるからなのだが――
ベッドの上で僕は本を、フレッドは忍びの地図を広げていた。

「ジョージ、ロニー坊やから聞いたんだけどさ」

うつ伏せになっていた体をごろりとフレッドが転がした。

2人だと、少しベッドも狭い。
家のベッドよりはマシだろうけれど。

「何?」

僕が本から目を上げないままそう言うと、
フレッドはその対応が気に入らなかったらしく、
僕の腕を掴んで読書の邪魔をした。


「ハリーが、ホグズミードに行けないらしいぜ」


僕は仕方なく本から目を離した。
話題が興味のあるものだっただけでなく、
あまり構ってやらないと、
フレッドが拗ねてしまうからだ。

「許可がもらえなかったのか? 
……あぁ、あのマグルの叔父のせいだな。許可証にサインしなかったんだ」


豚のように太った体。
ギラギラしたイヤな目つき。
何度怒られようと、
僕らの両親があんな風でなかったことに感謝したい。


「許せないよな。うちの親父さんか、ダンブルドアでも良い、
事情が分かっているんだから代わりにサインしてくれれば良いのに」


フレッドが舌打ちした。
どちらかと言うとフレッドの方が正義漢だ。
僕は少し冷めている。
最もこんな区別、
当人だからこそできるようなものだろうけれど。


「折角のこの機会に、ホグワーツに残る奴なんてほとんどいないからな。
……でもシリウス・ブラックのこともあるし。
ここを離れるのが危険だと思ったんじゃあないかな」


僕の言い分は最もだったのだけれど、
フレッドはそれが余計に腹立たしかったらしい。

僕の手元に残っていた本を取り上げると、
空いているベッドに放り投げた。


「でももうホグワーツに侵入しているかもしれないんだろ? 
どこに居たって同じさ。ディメンターに遭った時のハリーの様子を聞いたろう? 
少しは息抜きが必要なのさ。バタービールを味わって」

何か歯切れが悪い。何かを言いたくて戸惑っている様子を僕は感じた。

「フレッド」

思わず僕が呼びかけると、
フレッドは少し気まずそうに目を伏せた。

「……ホントは去年から考えていたんだ。あれを、ハリーにあげたらどうかって。
危険な目にばっかり遭っているだろう? 少しでも役に立つんじゃあないかな」

フレッドの言いたいことは分かる。
しかし、
僕は一応反論した。

「でも、危険に飛び込んで行くことにも繋がる」

あぁ、教師のようなことを言っているな、と僕は思った。

「そうさ。俺達も体験済みだ。
でもハリーにはハーマイオニーも、俺達の弟ロナルドだっている。
俺達はもう抜け道なんて全部知っているし、
あれがなくたって誰がどこをうろついているのかくらいある程度分かる。
そうだろ……ジョージ」


「そんな情けない声出すなよ、フレッド。
俺もそう思う。あれはハリーが持つべきだよ。
俺達がフェルチのところからあれを持ち出したのも、ロンがハリーの親友になったのも、
きっと俺達がハリーにあれを渡すためさ。
そんな気がするんだ」

僕の言葉に、フレッドはいたく感激したようだ。

「ジョージ……」

感動しましたっていう声で名前を呼ぶものだから
僕は照れくさくなってフレッドの手元から忍びの地図を奪った。
そしてとっておきの笑顔を見せて言った。

「それにこういうものはきちんと後輩に渡して、正しくイタズラに使用しなくちゃあな。
プロングスもパッドフットも、ムーニーもワームテールも、そう思ったんだよ」

僕は忍びの地図を指でなぞった。
僕らに様々な恩恵をもたらしてくれた物。
でもきっとこれは、僕らの持ち物ではないのだ。

「じゃあ、偉大な先輩達に乾杯しようぜ」

フレッドがバタービールを持ち出した。
杖を振ってその瓶を温めると、1つを僕に渡した。

「おう」

2人揃って蓋を開けると、僕らは無作法にもベッドの上で乾杯した。

「将来の大魔法使い、そして俺達の弟でもあるハリー・ポッターに」

フレッドがそう言って瓶を掲げた。

「後輩のために素晴らしい贈り物をしてくれた、イタズラ仕掛け人に」

僕がそう返して、同じように瓶を掲げる。
そして僕らは声をそろえて乾杯する。

「世界のために笑いを提供する聖人、ウィズリーの双子に」

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