今日の俺―明日の君

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 燃えるような赤色の髪
 同じ顔
 同じ声


 新しいイタズラを考えなくちゃ。丁度良く熱も出たことだし。
 マダムの薬で、体は全然辛くない。
 こうして1人でベッドに横たわっている、その理由。
 時期はずれに俺だけ風邪をひいた。
 それもマグルがかかるようなごくごく普通の風邪。


 1日中ベッドでだらだらとしている俺の隣に、ジョージがいない。


 いつも隣に居るものだから、たまに1人になると君のことを考える。
 隣に居るときには、考える必要が感じられないから。


「お前らさ、個々のアイデンティティは持ってないのか? いつも2人で、すっとそのままで居るつもりなの?」


 リーが言った言葉を、俺は少し気にしている。
 アイデンティティ云々じゃあない。
 俺はジョージと俺の違う所を知っている。
 燃えるような赤色の髪――ジョージの方が細くて柔らかい。
 同じ顔――パーツはほとんど変わらないけど、ジョージは俺のできない表情をする。
 同じ声――口調は全然違うんだぜ? 俺達はわざと似せているんだ。

 
 ジョージが俺で、俺がジョージで、なんて考えた事も無い。
 俺は俺の。
 君は君のアイデンティティを持っている。


 ただ考えているのは、ずっと2人で、ってこと。


 俺は知ってる。
 君はイタズラなんてしなかったら、成績はもっともっと上がるってこと。


 俺は知ってる。
 君は騒がしい事も好きだけど、静かに本を読んで過ごす時間も愛しているって事。


 だから俺は思う。
 君は俺に合わせているだけで、本当は別の夢を見ていたのではないかって。


「フレッド。起きろよ。寮に戻っても良いってさ」


 ジョージだ。
 やぁ、ジョージ。授業は終わったのか?


「終わらなきゃここにはいないさ。ほら、立てるだろ? 部屋でまた寝れば良い。夕食は適当に持ってきてやるから」


 俺はジョージの肩に腕を乗せて、寄りかかりながら歩く。
 俺の人生は、ずっとそうだった?


 なぁ、ジョージ。僕らちょっとだけ背が違うの、知ってた?


「はぁ? やっぱり熱あるな、フレッド。そんなの知らないわけないだろ。君の方が少し高い」


 部屋に着くと、俺はまたベッドに倒れこんだ。
 ジョージは乱暴に俺の靴を取ってどこかに放った。
 放った靴は床に置いておいた開発中の爆弾に当たったらしい。
 小さな爆発が起こったけどジョージは気にしてはいないみたいだ。
 俺も気にしてない。


 ジョージ。


「何?」


 俺、イタズラ好きだけど。


「うん」


 ジョージは?


「うん?」


 ジョージは、本読んで静かにしてるのも好きだろ?


「あ〜、フレッド? 熱を出すと弱気になる性格だったっけ?」


 違う。ジョージが一緒に熱を出さないのが悪いんだよ。


「なるほど、僕らいつも一緒にいるから、大抵どっちかが風邪をひくともう1人も仲良くベッドに直行だものな」


 その言い方、なんかいやらしいな。


「あ、強気になってきた」


 ほら、君の笑顔は少し大人っぽくて、ずっと優しい。


「良いかい? フレッド」


 うん。


「僕は確かにイタズラも、本を読んで静かに過ごすのも好きだけど、でもどっちも1人じゃあダメなんだ。2人でいないと、楽しくも無いし、安心もしない。だから、今日は君が隣にいなくて、僕も不安だった」


 無理してない?


「それ、そのまま返す」


 うん。今俺は苦しいよ。だから――。


「うん」


 何も言わなくても分かってくれる君が大切だ。


「僕はずっと、ウィズリーの双子で構わない。君が、僕と君が違う事を知っていてくれれば」


 うん。俺は知ってる。


 俺は知ってる。
 俺は君が大好きで、君も俺を大好きだって事。


 俺は知ってる。
 僕らは最高の兄弟で、相棒で、世界中のどの双子よりもイカシテルって事。


「次のイタズラを考えようか、ジョージ」


 そうしよう、フレッド。



 そしてきっと、明日は君が風邪をひく。

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