第1部<第3章>
最初にその一行を見かけた関所の役人達は何処の窃盗団の一味だ? と思ったに違いない。男は二人、一人は自分の馬に何処からか、攫ってきたとしか思えない愛らしい令嬢を乗せている。その男二人の着崩した服装、特に黒髪の方の男の乱雑に結んだ髪は窃盗団の罪を軽くしても令嬢には不釣合いなごろつきにしか見えない。
「あ‥‥の‥‥通行証は?」
「おい、通行証だとよ」
「へい」
黒髪の男が上格らしい。茶髪の男が馬を下りて役人に通行証を渡した。王家の紋章が刻まれた第一級の通行証。出国理由は婚約者との旅行とその付き添い。三つの名にはラング・リ・ストゥでも名家中の名家の姓が並んでいる。
「失礼ですが‥‥その出で立ちは?若君‥‥」
「あ? ああ、このくらいした方が目立たないかと思ってな。我が姫はお気に召されていないようだが」
かえって目立つ‥‥、そりゃ気にいらんだろう‥‥。という役人の感想には気付いていないらしく、若君は何気ない仕草でご執心の姫君の髪を片手にすくって唇を付ける。
「あの、もう構いませんか? コリーダの知人が迎えに出てくれているはずなのです」
「それは失礼を。お返し致します」
「良いご旅行を」
馬が関所を通り抜けてしばらく経つと姫君の方はごほごほと少し咳き込んだ。その様子ににっと笑って若君は姫君の帽子を取り上げる。
「なかなか様になってたぜ? お嬢サマ」
「一生忘れないからな‥‥フィリーン。まったく‥‥無理して裏声使うほどの事もなかったんじゃない?」
「あそこで何かしゃべっとかなきゃまじめに窃盗団か逃国人だと疑われてやしたぜ。まぁこれで役人の頭に残っているのは奇妙な貴族の若君とその婚約者の美少女って事でさぁ」
「そう、美少女な」
と言ってフィリーンはぷっと吹きだす。自分でやっておきながら屋敷を出る前、散々笑い転げていたのだ。母親に似ているとは言えこんなに女顔だと思っていなかったカイラはただでさえご傷心なのに‥‥。まぁマザスム夫人の化粧のテクニックもあるので一概に女顔とも言えないが。
「いっそこのまま嫁に貰ってやろうか?」
「それよりこのままソール王子に贈呈されたら大喜びっすよ」
「ぜっったい!脱ぐ!」
「大声で叫ぶなよ、妙な期待されるぞ。心配するな、此処はもうコリーダ。そして、あれが俺達の最初の目的地、アビス・プクト神殿だ」
「!」
フィリーンが指差す神殿は小高い丘の上にあった。陽光の当たる神殿はイメージそのものに白亜の光を反射している。カイラは今まで神殿を見た事がなかった。かつてラング・リ・ストゥにあった神殿は戦で廃墟と化し、今の今まで国外に出た事はなかった。
「すごい‥‥。綺麗な神殿だね。それに思ってたより大きい」
「アビス・プクト神殿はトグルの本神殿に継ぐ広さだからな。本神殿よりもアビス・プクト神殿の神官・巫女になる事の方が名誉だとも言われている、格の高い神殿だ」
「あそこにフィディア殿という巫女がおられるんだね」
「会いたいか? よーし! ラヤフ、スピードアップだ」
「意地悪いっすよ!?王子! 俺はぁ‥‥神殿なんて柄じゃないんでどっかその辺で情報集めでも‥‥」
「問答無用、逃げたら殺す」
その格好で言うとしゃれにならないよ‥‥とカイラは思ったがフィリーンは本当に馬のスピードを上げた。まずこの格好で追い出し決定じゃ‥‥とラヤフも淡い期待をかけるがさっさと神殿に馬をつけ、フィリーンは参拝堂の中へずかずかと入っていく。その格好にか、神官達が戸惑いを見せるがやっぱりね‥‥と後を追ってきたカイラの姿に少し安堵して見せた。遅れてラヤフもしぶしぶ入ってくる。
「参拝ですか? ご案内いたしましょう」
「いや、悪いが違う。此処にフィディアという巫女が居るはずだが、彼女に会いたい」
「失礼ですが、お名前をお尋ねしてよろしいでしょうか?」
「あ、フィリーンだ。そう言ってくれれば分かる」
一瞬言葉に詰まったのは下の名前まで出すかという事とカイラの名前を出すかだ。カイラの名前を出すのは避けた方が良いし――なによりこの格好だ――自分の下の名も庶民には下の名の方が覚えがあるだろうとやめた。フィディアが自分の上の名を忘れるわけがないし。
「王子、俺此処で待ってちゃ駄目ですか?」
「いい加減諦めの悪い奴だな。いいからついて来い。カイラの格好どうするかな。とりあえず下に元の服着てるからそのまま脱ぐか?」
「まずこの化粧落としたい‥‥。その前に、フィリーンのその格好どうにかしないとびっくりなさるんじゃない?」
「あ? 大丈夫だろ、フィディアなら」
「フィリーン様!?」
駆け足の音と声にフィリーンが振り返ると中から出てきた女性はフィリーンを一目見て、案の定その場に凍りついた。そしてそのまま意識を手放そうと後ろに倒れていくので慌てて駆け寄ったフィリーンはその腕を掴んで引き止める。
「ああ‥‥なんとおいたわしい‥‥。私のフィリーン様がこのようなお姿になられて、フィディアはこの十六年をお恨みいたしますわ‥‥」
「ばっ‥‥変装だ!変装! 何げに失礼だな!お前も!」
「冗談ですわ。この十六年、文の一つも下さらないのですもの、私を心配させた報復にしては安いものですわよ?」
「相変わらずいい性格してるなお前‥‥。久しいな、フィディア」
「ええ、ご立派になられて何よりですわ、フィリーン様。本当にお父上のお若い頃に生き写しで‥‥。ラヤフ殿もお久し振りですわね」
くるり、と背を向け、逃げようと企んでいたラヤフはいやぁ、ははっとごまかし笑いを浮かべた。逃げようとしたな? というフィリーンの睨みもごまかし笑いで耐えているが‥‥。
「昔話を持ち込むほど性格が歪んではおりませんことよ。いらっしゃいませ、ラヤフ殿。けれど‥‥急なご用件とはよもやご結婚ですの?フィリーン様。だとしたら私、何が何でも婚儀で祝福を上げさせて頂かなければ‥‥」
「え‥‥!? いや‥‥違うんです。あの‥‥」
「フィディア‥‥、来て早々悪いが何か化粧を落とせるような物、用意してくれないか?」
必死に笑いをこらえつつフィリーンは首を傾げるフィディアに頼む。フィディアが真相を知るのはこの後になるのだが、カイラの頬は化粧を落としたその後も不機嫌そうに膨らんでいた。
ようやく元の姿に戻り、通された部屋でカイラが一息ついている間にフィリーンは事情を説明した。相変わらずラヤフは浮かない顔だ。
「まあ、フィリーン様がラング・リ・ストゥ王家にいらっしゃることは存じておりましたが大変なことになりましたわね。けれどフィリーン様、リルアーヌ様、お二方ともご無事で何よりです。にしても、何も女装の他に方法はいくらでもありましたでしょうに‥‥」
「いやそれはそれ。何事も楽しまなきゃな。なかなか似合ってたろ? ま、それで、石碑の事も腕輪の事も気になるし、フィディアに会って行こうと思ったんだ」
「まぁ! 私はついででおまけですのね。それに‥‥ファディとジーマの事も連絡一つ下さらないで! 私、人づてにその話をお聞きしましたのよ? 直接連絡くださればアドバイスの一つも出来たでしょうに」
「! 何だと? どういう意味だ?」
「三人とも死んでなどいなかったのですもの。星は別の場所に移っただけ。それさえ分かれば対処できたはずですわ」
「え?三人?‥‥。その時に亡くなったのは二人じゃなかった? フィリーン」
「あら‥‥三人と言いまして? 間違えましたわ、二人とも死んでいなかったのです」
にこっと言い直すフィディアに言い返す言葉も見つからず、カイラはそうですか、と引き下がる。危ない危ない、とフィリーンが冷や汗を流していた事にも気付かずに。
「あーところでフィディア殿、石碑の件‥‥」
「そうでしたわね。あれは元々絶対神キルアーナではなく、メターナ・ネウユの神殿に伝えられていた物ですの。簡単に言いますと『雪の降る時期に別れ別れになっていた双子が再び出会い、運命への道を歩み始める』という意味なのですわ」
「なんだ、じゃあ私達には関係ないね、フィリーン」
「そうとも言えませんわ、カイラ様。『そは流れ別れし一つ星』、一つの星が二つの別の運命を持った星になったという意味ですけれどこの一つ星を持った子が必ず双子に生まれるとは限りませんのよ。別々の場所か、数年ずれて生まれる事だってありますわ。例えば尊公とフィリーン様のように」
「!」
「まぁ大抵は双子として生まれる事が多いですわ。驚かせてしまいまして?」
茶目っ気たっぷりに笑ってフィディアはお茶を、と席を立った。その隙にはぁとラヤフが緊張した空気を一気に吐き出している。それを見やりながらカイラはフィリーンを見上げた。
「もっとお年を召した方だと思ってたけどずいぶん若いんだね」
「フィディアか? お前、彼女を何歳だと思ってる?」
「え? フィリーンと同じ位じゃないのか?」
「甘いな、巫女とか神官といった聖職に就いてる者は神の加護によって長命になってるんだよ。なかなか適当な人材がいないからな。ちなみにフィディアは八十は軽く越してるぞ」
びっくりするカイラの反応を実に楽しんでいるようにフィリーンは意地悪く言う。それほどの年ならフィリーン達が彼女に弱いのも、フィリーンを上の名で呼ぶのも納得がいく。
「それでラヤフも彼女に頭が上がらないんだ」
「いや、こいつは違うぞ。こいつが盗賊団にいたのは知ってるだろう?」
「ちょっ‥‥王子!? 何ばらそうとしてるんすか!」
「戦の起こるちょっと前だから、こいつがまだ十位の時かな。手引きのために真っ先に神殿に忍び込んだんだが、フィディアに捕まってこってり絞られたんだ。側にいた俺が気付くよりずっと早かったからな、あれはすごかったぞ。おかげで仲間の奴らはとっとと逃げ出したんだ」
「‥‥」
「王子! 人のコンプレックスを突付きまわすのはやめてくれー!!」
想像は出来ないが確かに彼女を怒らせるのは気が引ける。まあカイラならそんな事はないだろうが。しかしフィリーンのこと、城中の者に言いふらしていたのだろう‥‥。今朝はファディを好きだったとか言う話を持ち出されるし、全くラヤフにとっては災難な一日だ。そこへタイミング良く何がコンプレックスですの? とフィディアがお茶の入った盆を持って部屋に入ってくる。いやいや、とごまかしながらラヤフは立ち上がろうとしたカイラを制してフィディアの盆を持ってやる。
「ミアーシに比べればお恥ずかしいほど粗茶ですがどうぞ」
「わぁ‥‥真緑色のお茶なんて初めて見た♪」
「ええい‥‥この天然箱入りぼっちゃまが‥‥。こっちの方が一般的なんだよ。外じゃそんなに高いのか?ミアーシは」
「ええ。ラング・リ・ストゥでしか手に入らない一品ですもの。一般の貴族ごときではとても手が出せませんわ。王室に呼ばれた時にお目にかかったくらいですわね」
「‥‥あのさ、フィリーン。ミアーシにロアって薬を混ぜると人を操れるんだろう? そうだとしたらあのリルスって子も、ファディとジーマだっけ? 三人ともそれで操られてるんじゃないかな?」
いきなり何を言い出すんだこいつは‥‥とフィリーンが顔をしかめるが、カイラは初めてのお茶を堪能していてそれに気付くまでに少し間が空く。だってさ、とカップを置いてカイラはフィリーンに視線を返す。
「彼女は三通りの話し方をしてたって言っただろ? 私に会った時の話し方、クィーンネクタリアと話してた時の話し方、最後にドア越しに聞いた、ファディって女(を呼んでた時。最初の二つは結びつくんだけど、最後の一つがどうも前の二つのイメージとは合わないんだよね。前者が作られた人格、後者が素(の彼女って気がする」
「カイラ王子‥‥女ってもんはその時々でどーにでも変わるもんですぜ。信用しちゃいけやせん」
「あら‥‥失礼ですわね、ラヤフ殿。リルアーヌ様、真偽は私には分かりませんが、その少女を、ファディとジーマの事も、信用してくださるのですね、尊公は」
「‥‥こんな荒事を起こす人ではないと思います、三人とも。少なくとも、ファディという方は私か父母か、誰かを助けようとしてくれました」
「人が良いにも程があるぞ‥‥カイラ。十年前にお前は二人に殺されかけてるってのに‥‥」
「フィリーン様、疑いたくばお疑いなさいませ。それは尊公様のお役目。信用して裏切られたリルアーヌ様をお守りするのも、ですわ。ですからリルアーヌ様、今はご自分の信じたい物を信じ、信じたい道を迷わずお進みくださいませ」
はい、と素直に応えるカイラの脇で、それじゃあまるで俺が悪役のようじゃないか、とフィリーンが膨れている。それだけ年をとっているという事ですわ、とファディに言い換えられてせめて大人だと言ってくれ、と返したきりぐうの音も出なかった。
「まぁ、せっかくこちらにいらしたのですから、もう一つお試しになられませんこと?お三方」
「? 何をだ?」
「実はこの神殿にも同種の石碑がありますの。この内容がもし当たったら、このまま石碑を追うというのは?」
「‥‥お前お得意の星の定めという奴か?」
「こじつけにくい内容ではあると思いますわ。『双頭の獅子の頭は今だ見合わさず。子は怪人(に隠されし熟し切らぬ赤き木の実を手に入れる』。中身は簡単ですのよ。運命の道を歩み始めた双子はまだ再び出会うことはない。双子の片方は怪人(‥‥これはよく分かりませんが怪人(に隠された少女を仲間にする、ということではありません?」
双頭の獅子の頭が双子、赤い木の実は女性のこと、熟し切らぬというのはまだ成長しきっていない、少女であるという事か。
「難しいね、怪人(って言うのが‥‥」
「とりあえず町で情報を集めてみやしょうや。王子は?」
「もう少しフィディアと話す。そうだカイラ、お前剣を持って来てないな? ラヤフ、適当に買ってやってくれ」
「待ち合わせはどうする?」
「こっちで適当に探す。そんなに大きな街じゃないからな。気を付けろよ」
うん、と即答するあたりがどうにも不安を誘うのだが。まぁラヤフもいるなら大丈夫だろう。二人が出て行くのを確認してフィリーンは大きく溜息をついた。その様子にくすっと笑ってフィディアはお茶を注ぎ足した。
「話されてませんのね、リルアーヌ様には。いえ、『覚えていらっしゃらない』方が正しいですか?」
「‥‥ああ、カイラは覚えていない。というよりは、大人達が意図的に忘れさせた。忘れて良かったんだ。結果的に生きていたとは言え、自分の目の前で、三人もの人間が死んだのだから」
「でも、尊公様は覚えていらっしゃるのですね」
「‥‥目の前で父の首が飛ばされても平然と突っ立っていたようなガキだからな」
「フィリーン様‥‥。それは違いますでしょう?」
平然ではなかった。けれど平然を装った。死を悟った父王が最期まで『王』として自分に笑みを向けたように、自分もその子として応えなければならなかった。そうしなければ自分の背に隠れて怯えていたファディを誰が支えてやれたというのだ。その反面、父の死を理解していなかったのかもしれない。自分の足元に転がってきた首が誰の物なのか、首を無くした体が誰の物だったのか分からなかったのかもしれない。だから、未だに自分はあの瞬間を思い出しても涙を流せない。ただ、その時自分の中にあった言葉は覚えている。
――何の不満があって父は殺されなければならなかった。何故子の前で父を、親族を次々と殺しながら自分に向けた刃をあの男は引いたのか。何故自分は、戦意を失った男に刃を突き立てなかった‥‥!?――
「フィリーン様‥‥思い出させてしまいまして?」
「あ‥‥悪い、フィディア。大丈夫だ、‥‥忘れることなんて、出来なかった。三人は俺のために死んだんだ。だから、大人達がカイラに忘れさせようとするのをあえて止めなかった。カイラが忘れてくれて、俺は心の何処かで安心してた‥‥」
「尊公のせいではありませんわ。それに、三人供生きていますわよ」
「教えてくれ、フィディア。ファディには会った。ファディは確かに俺の知っている彼女だと分かる。だけどジーマは? リルスは‥‥リルスは本当にあのリルスなのか? 俺の持つ『サナソルムの腕輪(』の本当の持ち主になるべきだった‥‥」
「分からない‥‥としか今は言えませんわ。三つの星は確かに生きておりました。けれどより大きな存在に隠されて、私には今も生きているとしか申せません。それに、本当に昔のままなのかも‥‥。リルアーヌ様のおっしゃるように操られているのかもしれません。そうでないのかも、しれません」
「‥‥そうか。でも、ありがとうフィディア。ようやく、十年振りにリルスを取り戻せるチャンスがめぐってきたんだ。今度は、誰にも奪わせない。必ずこの手に‥‥」
取りかえそう‥‥あの日この手から奪われた少女を‥‥。奪った黒幕がクィーンネクタリアという女なら迷う事無く自分はその女を殺めるだろう。その程度の報いではとてもこの十年は満たしきれないけれど、そうせずにはいられぬに違いない‥‥。
救出されたファディを心配していた少女は、落ち着いてきたのか次第に怒りの色を濃くしていく。治めなければ‥‥と思う心とは裏腹に、縛られたまま解こうと暴れまわった体は疲労していた。青年の、ジーマの腕を支えにしなければ立っていられないほどに。
「カイラね!ファディ。カイラの仲間がファディをこんな目に!」
「いえ、リルス様‥‥カイラではなくフィ‥‥」
さとったのかジーマの手がすかさずファディの口をふさぐ。真実を話さず、少女の怒りを全てカイラに向ける気なのだ。胸が重かったが今は、この手を払う力も無い‥‥。
「カイラを追います、リルス様。どうかこのジーマにお許しを」
「カイラの元にはフィリーンもおります」
「クィーンネクタリア!? 本当!? どうしてフィリーンまで一緒に‥‥」
「カイラに欺かれているのです。哀れなフィリーン‥‥」
「私も追うわ!クィーンネクタリア! 良いでしょう? カイラを殺めてフィリーンも、正統な王位も奪い返す。私がそれをしなくてはいけないわ。そうでしょう?」
「頼もしい事‥‥。慌てずとも良いわ、リルス。まずはファディの回復を待って、明日発ちなさい。大丈夫、どれだけ逃げ回ろうと、カイラはこの手から逃れる事などできぬのだから‥‥」
この女の恐ろしさに気付いたのはいつからだろう‥‥。自分が逃れようと足掻いている事すら女は見透かしているに違いない。その暗い瞳で、自分の抵抗する手足はもぎ取られていく‥‥。後はただ、その恐怖に従う事しか出来ない‥‥。
2章へ/4章へ