Requiem−Offertorium

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葬送
 すべて上手くいっていた。この手で太陽を落としたのだ。そして自分は闇に守られる。約束された、愛される未来が待っているのだ。そう思っていた。疑う余地はなかったのだ。誰にも!

 しかし何なのだ、この状況は?

 守ってくれるはずの闇が消えて、まだ眩い光を持つ星が、1つ空に残ってしまった。しかも、あの噂は本当だろうか? 太陽の遺児が、闇を払ったというのは。そして今、僕は星に追われている。彼は知っているのだ。太陽を裏切ったのは僕だということを。裏切りは鼠だったと、彼は知っている。

 彼だけが知っている?

僕はもう身も心もすべて闇の住人だった。だから、闇の声が良く聞こえる。

 沈黙させてしまえ。彼も、自分も。

 悪魔のような計画が閃いた。追い詰められた鼠が猫を噛むように。追い詰められた平凡な僕は、この時初めて――そしてそれが最後だった――非凡な才能を見せた。あの方が死んで、僕は庇護者を失った。闇の側からは、あの方を死に引き渡したと思われ、光の側からは彼が追ってくる。闇にも光にも、ピーター・ペティグリューという人間の存在する余地はない。だがしかし、1人だけ沈黙することなんて出来ない。当初の目的を果たさなければならない。誰のためでもない。自分のために。2つあった光は、2つとも落とさなければ。

「ピーター! 貴様、殺してやる!」

 ギリシャの彫像よりも整った顔。細身で長身の、力を秘めた体。夜空のような艶を持つ髪。そして怒りに燃える双眸。その何もかもに見える美しい光を、奪う喜び。それはとても狂気に満ちていたが、この時代に狂気を身に帯びていない者がいただろうか。もしいたとしても、その人はもうこの世にいないのだ。僕は悪魔の囁くまま、大勢のマグルの中で叫んだ。

「リリーとジェームズが。シリウス! よくもそんなことを!」

 彼は言い返そうとして口を開いた。何も知らないマグル達が注目する中、僕は続けた。

「僕も殺すのか? ダンブルドアも、リーマスまでも?」

 最後の言葉に、彼は沈黙した。正しい人狼を信じず、堕ちた人間を信じた君。僕は彼の傷を抉って、内からの光を奪った。その光は、僕の手の中ですぐに輝きを失った。元には戻れない。中途半端に繋がっている関係はいらないのだ。僕達はもう、あの箱庭では暮らせない。


 ならば壊してやる。
 すべてを。


 呪いの言葉が生んだ爆発音。

 そして煙と悲鳴の起こる地獄の中で、僕は自分の指を食い千切った。口の中に広がる血の味。これが葬られるピーター・ペティグリューの味。これが最後の。

 鼠へと変わる一瞬の間に、僕は学生時代の記憶を垣間見た。

 死んだジェームズ。

 沈黙したシリウス。

 これから死よりも辛い苦しみを味わうであろうリーマス。

 そして、消えたピーター。

 誰もが笑って、肩を組んで、手を叩き合って。


 涙が溢れるくらい、幸せな情景だった。

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