Apricot
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ここ数日で、ミシェルを取り巻く環境は一変したように思われた。暗殺者の影が近づき、ヘンリーの教え子であるというダニエルが訪れ、そして今日、あの薬の注文者である薔薇姫と会う。すべての不安の源は、薔薇姫なのだろうか。彼女は、一体何者なのか。
昨日の夜、カルロス将軍からの使いが屋敷へ訪れた。薔薇姫は将軍の屋敷に宿泊するそうなので、屋敷へ直接来て欲しいと言うのだ。将軍の館は王宮からそれ程離れてはいない。国を守る役職であるのだから、当然のことなのだろう。とにかく病気知らずの人物で、彼の為に外傷用の薬を調合したことはあっても、風邪薬などを作った覚えは全くない。だからこれまでミシェルがカルロス将軍の屋敷を訪れることはまれだった。
階下では朝からジュリアのはしゃぐ声が聞こえる。昨日のことをベティに報告しているような声だった。
そういえば、あまりはしゃぐなと言い忘れたな……。
ミシェルはそう思って笑った。
まぁ、良い。
そのはしゃぐ声は、彼に不快感をもたらしはしない。ミシェルは無意識のうちに自らの首元に触れた。包帯のように巻きつく布は、あの時から変わりなくしっかりと肌を覆っていた。
あの娘が幸せになれば、それで良いんだ。
ミシェルは注文された薬を手にし、馬車に乗って将軍の屋敷へ向かった。
王城からそう離れていない将軍の屋敷では、カルロス自らがミシェルを出迎えてくれた。
「良く来たなミシェル。薔薇姫の部屋へ案内しよう」
背を強く叩くのは、この将軍なりのスキンシップだ。ひ弱な者はそれだけで痛がり、それ以降将軍には近づかなくなる。案外彼はこうやって人を観察しているのかも知れない。
部屋へ行くまでの間、将軍は実に上機嫌だった。ミシェルは薔薇姫がカルロスの愛人なのではないかと密かに疑っていたが、楽しそうに話す将軍を見ていると、どうも自分の勘違いであるということが分かった。
「薔薇姫は本当に美しい方だ。お会いしたら、お主も驚くだろう」
満足そうにうなって、カルロスはまたミシェルの背を叩く。
これは、恋人というよりは娘じゃあないか。
娘を自慢する父親だ。闘神とまで呼ばれる将軍が、この時ばかりは何と可愛らしく映ったことだろう。
「ここだ。儂は王宮へ行かねばならんから、話は二人でしてくれるな?」
「はい……」
ミシェルは部屋の前の赤い物体に気付いて、それを拾った。美しい深紅の薔薇の花だ。
「おぉ、姫が今朝摘んでおられたから、部屋へ入るときに落とされたのだろう。渡して差し上げてくれ。それではミシェル、くれぐれも変な気を起こさぬようにな」
牽制のつもりで睨み付ける将軍に、ミシェルは笑って返した。
「ルイスではありませんので、ご心配なく」
ミシェルの答えに、将軍は豪快に笑って去って行った。
将軍が去ってから、ミシェルはしばらく部屋の前にじっと立っていた。部屋の扉を開けるのが怖かったのかもしれない。それは昔、部屋に閉じこもって泣いていた母の元へ行くときと似た不安だった。扉を開ければ全てが壊れてしまうような、そんな予感だ。ミシェルは大きく息を吸って、吐いた。右手を扉の前へ置き、二回ノックする。
「……どうぞ」
ドアノブへ伸ばした手が、一瞬ひるむ。母の声に似ている気がしたのだ。ミシェルは汗ばむ手で、ドアノブを回し、押した。扉の軋む音が微かに聞こえる。彼は息を呑んで部屋の中を見回した。まるでそこが、母の部屋でないことを確認するように。
殺風景な部屋は、確かに母の部屋に似ていた。しかし、すすり泣く声も、そんな母の姿もそこにはない。あったのは、白い人影だけだった。純白の人影が立ち上がり、ベールをとった。すると、金色の髪が現れる。ミシェルの髪の色に似ていた。また母の影を見たミシェルは、扉を開けた場所から動けないでいた。
「おかけになって」
薔薇色の唇がそう動いたが、ミシェルは立ちつくしたままだった。女性は首を傾げ、彼が手にしている赤い薔薇に目を留めた。すると音も立てずミシェルに近づき、薔薇を握る彼の手に触れ、微笑んだ。
「外に、落ちておりましたか?」
母とは違う、現実味のある笑いに、ミシェルはやっと正気を取り戻した。
「え……えぇ。お部屋の前に」
ミシェルは女性の白い手に、薔薇を手渡した。白と赤と金の色合いが何とも言えず、幻想的だった。ミシェルは席を勧められ、それに従うと、気を落ち着かせる為に深呼吸した。女性はミシェルから受け取った花を花瓶に飾った。その花瓶には今朝摘んできたと思われる、同じ赤い薔薇が数十本束で飾られていた。
「わざわざお越しいただいて、ありがとうございました。ミシェル=フォード様」
将軍が自慢するのも頷ける。無理に白く見せる化粧を施し、やたらと宝飾品を付ける女達よりも、彼女はずっと輝いていた。宝石のような瞳が人を惹きつけ、その声で捕らえるのだろう。
「……ミシェルとお呼び下さい。貴女は、薔薇姫とお呼びすればよろしいのですか?」
彼女は少し戸惑うように笑った。
「えぇ、それが私の名前ですのよ。ですから、本名を教えないわけではありませんの。気を悪くなさらないで下さい」
そんな馬鹿な、と彼は心の中で笑った。『薔薇姫』が本名だなんて。そんな名を子供につける親がいるものか、と嘲笑した。そういう態度が自分を落ち着かせる方法だと、無意識のうちに選択していたのかもしれない。
「注文しておりました薬は、持ってきていただけましたか?」
「えぇ、こちらに」
ミシェルは木の薬箱から袋に入った薬をいくつか取り出した。
「処方は、ご説明致しましょうか?」
彼女は少し考えてから、首を横に振った。本当は考えるまでもなかったのだろう。注文書を見た時点で、彼女には薬の知識があることが分かっていたのだから。
彼女は袋の中を確認しているようだった。そして、確認し終わると、彼女は袋をテーブルに置いた。
「一つ、足りない物がございますわ。トリカブトがありませんでした」
当然の事だった。ミシェルはわざとそれを袋に入れなかったのだから。
「トリカブトは危険な薬で、少しでも間違えば毒となります。どうしてもとおっしゃるのでしたらお出し致しますが、薬としてのご使用ならば別の薬になされてはいかがでしょう」
用意してきた答えを、ミシェルはすらすらと並べた。そして彼女の反応を伺う。すると、ミシェルが驚くほど、彼女は美しく華やかに笑った。その中にやましい光は見つからない。
「良薬として使用するつもりは最初からありませんでしたので、ご心配には及びませんわ」
ミシェルは心臓がえぐられるような痛みを覚えた。何故彼女はその台詞を、あれほどの笑顔で言うことが出来るのだろう。それはまるで、あの時笑ってミシェルに手招きをした、あの人。それと同じ。
落ち着け!
ミシェルは一心に自分に言い聞かせた。
「……一体、何にお使いになるというのですか、貴女は」
自分の胸の鼓動が聞こえた。
「毒薬として。他には、ありませんでしょう? ミシェル様」
彼女は笑顔を崩さない。ミシェルが暗殺者に憎しみを抱きだしたのは、他ならぬ師の死からであった。彼が師からの手紙を受け取り、急いで師の住居へ駆けつけた時、その時の情景を彼は今でもはっきりと思い出すことが出来る。それだけ脳裏に強く焼き付いた情景。そして、この想い。
――許せない。
その瞬間にミシェルは冷静さを失った。きっと、それを自覚できぬ間に、冷たい炎が燃え上がったのだ。
「……ルイス将軍とは親しい間柄だそうですね、ミシェル様」
相変わらず彼女は何の悪意も感じさせない。ミシェルは自分の熱を感じとることが出来なくなっていた。
「白薔薇家の正体と、赤薔薇の存在について、将軍からお聞きになられた事でしょう。秘密事など、友情や愛情の前ではもろいものですわ。……良いご友人をお持ちで、羨ましい」
ミシェルはそれを痛烈な皮肉だと受け取り、我慢できずとうとう椅子から立ち上がった。音をたてて、椅子が倒れる。その音に、彼女は驚きもしなかった。ただじっと、彼の瞳を見つめていた。
「貴女は暗殺者だ。そうですね」
彼女はミシェルよりも十も年下だった。しかしミシェルは部屋に入った時から、彼女は自分と同い年くらいの女性だと思い込んでいた。美麗で、礼儀正しく、笑顔も抑えられていて、幼さなど微塵も感じさせない。
「えぇ、そうですわ。暗殺に必要な毒が欲しかったのです。近いうちに仕事がありますのよ」
「私は……暗殺者に薬を売るつもりはない。どうしてもとおっしゃるのなら、他の薬師をあたってください」
ミシェルは先程渡した袋を取り上げ、また自分の木箱に納めた。彼はほとんど怒りに流されていた。彼女と、師を殺した暗殺者が違う人物であると分かっていたのに、彼はそれでも許すことができなかった。
部屋を出ようとしたミシェルを、薔薇姫の一言が止めた。
「私が、白薔薇か赤薔薇かはお分かりですの?」
ミシェルは振り返った。薔薇姫は花瓶から赤い薔薇の蕾をとり、かぐわしく咲く前の花の香りを嗅いだ。白い手に、その赤はまさに血のようだった。
「赤薔薇……『暗殺者を暗殺する者』。私の仕事は、ヘンリー=スタンス氏の養女、ジュリア様を狙う暗殺者を暗殺することですわ」
「……な、に?」
初めて、彼女は暗殺者の顔をした。冷たく、何の感情も宿さない。暗い、瞳。
「元は国外の方でも、今この国に住んでいれば私の保護対象となりますもの。ミシェル様。貴方が何を考えているのか、それは私には関係のない事ですのよ。ただひとつ言えることは、暗殺者を見くびらないことですわ。相手は殺しのプロ。私はそれを狩る者です」
「……貴女が何と言おうと、暗殺者であることに変わりはない。ジュリアは私が命に代えても守ってみせる。貴女の力は、借りたくない……」
暗殺者の力など、とミシェルは声を搾り出した。
「……良いでしょう。私は手を引きます。その代わり、貴方が守りきれなくとも、この件で私は今後一切動きません。それでも、宜しいのですね、ミシェル様」
これは賭けだった。ミシェルのプライドを賭けた勝負だ。ここで折れて、薔薇姫にジュリアを狙う暗殺者を暗殺してもらうか、それともこのまま彼がジュリアを守るか。もしジュリアを守れなかったら、ジュリアは死んでしまう。相手は殺しのプロ。ミシェルはただの薬師だ。守りきれる確率は、彼が自身の命を賭けたとしても、少ない。分かりきったことだ。それなのに薔薇姫に譲らないのは彼の意地だ。
意地で、ジュリアを危険な目に遭わせるのか?
それは今までに何度も自問したことだ。あるいはすべてをルイスやカルロス将軍に打ち明ければ、彼らはジュリアを守るための協力を惜しまないだろう。だがミシェルはどうしても自分の力だけでジュリアを守りたかった。
いや、守りきれる。守りきってみせる。絶対に!
「ジュリアは私が守ります。貴女は手を引いてください、薔薇姫」
そう言うと、ミシェルはもう振り返ることなく部屋を、そして屋敷を出て行った。
薔薇姫は、深紅の薔薇を見つめながらずっと立ったままでいた。しばらくして深く溜息をもらすと、用意していた紅茶を百合模様が浮き出るカップに注いで、それを味わった。蒸らしすぎたのか、味が濃く出すぎて苦い。彼女は顔をしかめた。
「トリカブトの花言葉は美しい輝き。そして復讐――」
その言葉の味は紅茶よりも苦いことを、薔薇姫は誰よりも良く知っていた。
命を賭けてまで守って……その後に残る者のことを考えているのかしら。
「まぁ、お嬢様。最近はきちんと七時に起きられますのね」
ジュリアを起こそうと思って部屋へ入ってきたベティが驚きの声を上げた。確かに最近のジュリアは早起きだ。早く起きてもすることがないので、着替えたあとは鏡台の前に座ってじっと自分の姿を見ている。
「……ねぇ、ベティ。私、綺麗?」
「突然どうなさいましたの? えぇ、もちろん可愛らしくていらっしゃいますよ」
ベティはジュリアのベッドのシーツを剥ぎ取った。今日は晴天。張り切って屋敷中の洗濯をしてしまわなければいけない。
「可愛いじゃなくて、綺麗かって訊いたのよ」
「まぁ、どちらも同じではありませんか?」
「ぜんぜん違うわ! 可愛いじゃ、子供扱いしているじゃない」
「そうでしょうか」
「そうよ!」
可愛らしさには自信がある。大概の女の子は可愛らしく振舞えるものだとジュリアは思っているのだから当然だ。
でも綺麗は違うわ。
多分いまの自分を見て綺麗だと言う人はいないだろう。幼い子供が鏡に映っている。ジュリアは何故か悔しかった。
素敵なレディに……。
早くなりたいと、ジュリアは思った。ミシェルを見ていると急かされる。王宮に上がっている一人前の薬師。まだ見ぬ王宮にはきっと綺麗な女性がたくさんいることだろう。ジュリアは王宮でのミシェルの姿を見たことは一度もない。
あの人の言う『素敵なレディ』が、王宮にはたくさん居るんだわ。
そのレディ達に、彼はどういう風に接しているのだろう。考えて、彼女はすぐに止めた。
そんなこと、私には関係ないじゃあない。
朝食を食べて、アルスに礼儀作法を教わらなくてはいけない。王宮での常識を知って、他の人と喋れるようにもしなければならないのだ。
そうよ、私は忙しいんだわ。
あの人のことなんて、考えていられない。
髪を整えて、ジュリアは一階へ下りた。食堂へ入ってすぐに、ジュリアは驚いて足を止めた。いつも自分の部屋で朝食を摂り、さっさと王宮へ出て行ってしまうミシェルが、どういうわけか食堂にいる。食事は摂り終えたのか、アルスが淹れたお茶を飲んでいる。
「お嬢様、おはようございます」
アルスがいつものように椅子を引いてくれた。長いテーブルの端。ミシェルの向かいの席だ。
「……おはよう、アルス」
にこりと笑い、アルスはジュリアが膝を折ると同時に椅子を押した。
「……ミシェル?」
最近は立て続けにおかしなことが起こる。ジュリアはミシェルの真意を図りかねた。
「ジュリア、喋るのは食事を済ませてからにしなさい」
ジュリアは渋々ミシェルの言葉に従った。ミシェルはその間も涼しい顔をしてお茶のおかわりをアルスに注文していた。
ジュリアは下品にならない程度に素早く朝食を腹の中に収めた。ミシェルにあれこれ言われてはたまらないからである。空になった皿をベティが運び、アルスがお茶を持ってきた。今日はカモミールのハーブティのようだ。香りでわかる。ミシェルはお茶を口にしてカップを置き、珍しく呆けていた。どこを見ているのか、焦点がまったく合っていない。じっと観察していると、ひとつ、小さく溜息をもらしたのが分かった。そう言えば、ベティが最近ミシェルの溜息が多くなったと言っていた。好きな女性でもできたのではないかと。
まさか本当に?
「ねぇ、ミシェル」
呼びかけると、やっとミシェルの焦点が定まった。
「今日は王宮へ行かないの? もう時間よ。行くのだったら準備しないと」
「……しばらく休むことにした。そう毎日行っても仕方ないしな」
ミシェルは最後の一口、カップに残っているお茶を飲み干すと立ち上がった。
「あ、ねぇ、聞きたいことがあるの。午後に部屋へ行っても良い?」
咄嗟に出た言葉に、ジュリア自身焦った。
聞きたい事? そんなの……あるといえば山ほどあるけど……。
実際本当に聞きたい事など、全くないような気がした。ジュリアは前言撤回することもできずに、ミシェルが断ってくれることを願った。
「……せっかく晴れているんだ、庭で待っているというのなら話を聞いてあげよう」
ミシェルがあっさりと承諾したおかげで、ジュリアは質問事項を午後までに考えなくてはいけなくなった。
しかし、ジュリアが今まで聞かなかったせいもあるのだろうが、最近のミシェルは口が軽くなったように思う。いつも厳しい顔をしているのは変わらないが、ベティに言わせるとあれでも笑うようになったのだそうだ。確かにここ二・三日で雰囲気が柔らかくなったような気もする。おまけに彼女を王宮へ連れていくという始末。
「……ミシェルは、結婚しないの?」
夏にジュリアを連れて行って、彼女を婚約者に紹介するつもりなのではないかと、彼女は考えていた。驚かされるのはごめんなので、先に聞き出してやろうという考えだ。
ミシェルはそんなジュリアの考えなど知らず、突然の質問に笑った。
「何を訊くのかと思ったら……」
結婚の話しが出るとは、ジュリアも女だな、とミシェルは思った。
「私が邪魔? 相手はいるんでしょ?」
「相手など居ないよ。私の結婚を心配するより、自分の事を考えるんだな。夏に行く王宮で、良い相手でも捜しなさい」
「私はまだ十四ですもの」
「女は十五近くなったら婚約者くらいいてもおかしくはない」
「……やっぱり私が邪魔なのね。早くお嫁に出して、厄介払いしたいんでしょ。貴方も二十八ですものね。綺麗な女の人と、二人で暮らしたいわよね」
芍薬の葉が大きく広がり出す庭で、ジュリアは泣きたくなった。情けない。言ってやりたかった。
私は自分の意思で貴方の側にいるわけではないのよ!
ただ、他に行くところがないからここにいるだけで。そもそも孤児院などに入れてしまえばよかったところを、ここへ連れてきたのはミシェル自身なのだ。
邪魔に思うのなら、あそこで私を置いていってしまえばよかったのよ。
そうすれば他に頼る人もいない私は、一人孤独に死んでいたでしょう。
パパの隣で。
じわりと浮かぶ涙を、ジュリアは慌てて拭った。
「ここにいるより……」
ミシェルの声が耳に響く。大きな手が頭に触れ。ジュリアの体は隣に座るミシェルの腕の中に収まった。胸元に、丁度ジュリアの顔があたる。ジュリアは戸惑った。義父の腕の中に居るような錯覚に襲われたからだ。
「……ミシェル……」
そう、義父ではない。養父の匂いではない。
「ここにいるより、誰か好きな相手を見つけて、早くこの家を出た方が良い。先生も、お前が幸せになることを望んでいらっしゃる」
すっと、ミシェルはジュリアから離れた。そのまま呆然としているジュリアを残して、屋敷の中へ消えて行った。
そうだ。
ここを離れて、何もかも忘れてしまった方が良い。
何も思い出す必要はない…………。